FP office株式会社の髙屋亮FPによると「年収1000万円前後の世帯ほど『老後破綻』に陥りやすい」そうです。現役時代にしっかり稼いでいれば老後は安泰のはずですが、いったいなぜなのでしょうか。年収1,000万円のサラリーマンAさんの事例をもとに、老後破綻に陥る原因と解決策をみていきましょう。

日本の上位5%だぞ、なにかの間違いだろ…年収1,100万円の52歳サラリーマンが“思わず二度見”「ねんきん定期便」に記載されたまさかの事実【FPが解説】
思わず二度見した「ねんきん定期便」の中身
Aさん「学資保険は準備していたので、子どもたちの学費については問題なし。あとは退職金と年金でなんとか暮らせるだろうって、漠然と思っていたんです。
50代以降のねんきん定期便には、65歳時点での年金受給額の目安が書いてあると聞いて、こないだ初めてちゃんと見てみたんですが……いやはや、思わず二度見してしまいました。
そこには、私の年金額は190万円、ひと月分に直すと16万円程度と書いてあったんです。妻の分を足してもせいぜい月25万円。年収が増えるにつれて厚生年金の天引きも増えていたから、もっともらえると思っていました。自分で言うのもなんですが、年収1,000万円以上の給与をもらっている日本人って5%くらいですよね? だから、この金額はなにかの間違いだろうと思ったのですが……」
年金「月25万円」は平均額を上回っているが…
Aさんが不満を漏らす「月25万円」の年金受給額は、他の世帯と比べると「平均より少し多い」といえます。
2019年にメディアで話題となった「老後2,000万円問題」は、高齢者夫婦世帯の平均年金収入が月21万円であることを根拠に、それに対して平均生活費は月26.5万円のため、毎月5.5万円不足×30年=約2,000万円が不足するという試算をもとに出てきたキーワードでした※。
※ 計算上、数値は概数としています。
よって、A夫妻の年金受給見込額は平均的な年金収入よりも月4万円ほど上回っています。
しかし厄介なことに、A家の生活費は月50万円以上。出費は平均値より23.5万円も上回っているのです。このままでは「老後破綻」も免れません。
高所得者がハマる“甘い罠”
ハウスメーカーや外資系保険会社など、さまざまな職種で働いてきた筆者自身の所感も含みますが、数字が好きな男性はよく「年収1,000万円」を目標にします。日本の数%しかいない存在ですから、それを達成すると社会的ステータスが上がる感覚になるのもたしかにうなずけます。
しかし、収入が増えると欲が出てきます。
「もっといい家に住みたい。どうせだったら、都心の快適な住環境がいい」
……悪いことではありませんが、これを叶えると、いつのまにか近くに並ぶお店もいいお値段がするところばかりになっていきます。
また、子どもがいる場合は「教育の質」にもこだわります。高所得世帯はわが子を中学から私立に通わせるケースも多いですが、世帯年収1,000万円程度の場合、学費が着実に家計を圧迫していくのです。
Aさんも、わが子の教育や住環境、身に着けるものの「質」にこだわった結果、ほとんど貯金ができていないということでした。