(※写真はイメージです/PIXTA)
1億円…頑張れば頑張るほど膨らむ妻への財産分与額
家庭を顧みず仕事ばかりのAさん。不動産経営に執着する姿は、妻Bさんからみると家族より不動産を大切にしているように映り、受け入れられないものがありました。
Aさんからすると、ただ一生懸命に仕事をしていただけなのですが、気持ちのすれ違いは一向に解消されず、Bさんは子どもを連れて家を出てしまいます。Bさんは離婚協議に際して、直接顔を合わせたくないという意向もあり、弁護士を通じて連絡を行いました。
請求された財産分与額は、実に1億円。結婚してから築いた財産の半分の金額です。Aさんが仕事を頑張れば頑張るほど、財産分与額は膨らんでいきます。
結局Aさんは、1億円の支払いをすることになったのですが、その支払いの際に手を貸してくれたのが、Aさんの2つ違いの妹であるDさんでした。不動産経営の手伝いをしていた妹Dさんが、財産分与に必要な資金を一部貸してくれたのです。手伝いをしながらAさんの仕事が順調であるとわかっていたDさん。不動産売却によって離婚に伴う分割資金を捻出することで、不動産経営に支障をきたすことがあってはいけないという思惑も働いたようです。
息子にはこれ以上財産を渡したくない…
離婚してからというものAさんは、妹Dさんと協力して不動産経営を営みました。離婚は決して望む事態ではありませんでしたが、経営は順調そのもの。資産はその後も膨らみます。
一方、別れた元妻のBさんと1人息子のCさんは1億円の財産を引き継ぎ、悠々自適に暮らしていると人づてに伝わってきます。息子Cさんは離婚後、父であるAさんに感謝するどころか、近寄りもせず母Bさんとベッタリです。この状態にAさんは、実の息子であるCさんに対して、これ以上の財産を遺してあげたいという気持ちは薄れていったのでした。
Aさんが遺すことにした遺言書
70歳を過ぎたころ、Aさんは遺言書を遺すことにします。いまの状態で自身に万が一のことがあった場合、相続するのは息子Cさんであることはわかっていました。一方、離婚後、父親であるAさんに連絡をすることもなく、Bさんが受け取った財産の恩恵で豊かに暮らしている40代も後半に差し掛かろうとしているCさんに積極的に財産を遺す理由はありませんでした。
離婚後、Aさんと妹Dさんとの関係は良好で、妹Dさんの子供たち(Aさんにとっての姪、甥)を実の息子以上に可愛がっていたAさんが遺言書に遺す内容に迷いはありませんでした。すべての財産を妹であるDさんに相続(遺贈)させることにしたのです。もちろん、息子Cさんの最低限の取り分である、遺留分の課題はありますが、生命保険を掛けるなどの対策を行い、遺留分が過剰とならないように、また遺留分の支払いに困らないように準備を進めました。
7年の月日が経ち…まさかの妹の旅立ち
遺言書を遺したこともあり、Aさんは穏やかに70代後半の老後を過ごしていました。一方で体力も徐々に衰え、物忘れも増え始めます。そんなタイミングで、妹Dさんに病気が見つかります。がんの再発でした。50代に一度乳がんを患っていたDさんを、がんの病魔が再び襲ったのです。1年ほどの闘病もむなしく、Dさんは兄よりも先にこの世を去ってしまいました。