生命保険において、自ら情報を収集する主体的な顧客である「能動的加入者」と、そうでない「受動的加入者」では、それぞれ満足度などにどういった差が出るだろうか。生命保険となると若年層にとっては保障ニーズの見極めが難しく、教育の重要性などが指摘されている。本稿では、ニッセイ基礎研究所の村松容子氏が、保険選保障ニーズを知ることの重要性について解説する。
生命保険「能動的加入者」の視点から、保障ニーズを知ることの意義 (写真はイメージです/PIXTA)

保障ニーズを検討することが重要

以上みてきたとおり、生命保険加入者を加入検討プロセスにおける行動の主体性および自身のニーズ認識をキーとして生命保険加入者を3つのタイプに分類し、その動向に着目してきた。能動的加入者は、2023年に生命保険に加入した人の半数程度にまで増加していた。能動的加入のうち、当初は疑似能動的加入者の増加が目立っていたが、最近では真性能動的加入者が増加していることが確認できた。自分の保障ニーズと照らし合わせて、その保険が自分に合っているかどうか判断できる消費者が増えていると考えられる。

 

ただし、今でも、疑似能動的加入者数が真性能動的加入者を上回り能動的加入者の大多数を占める。特に、年齢による差は顕著で、自ら情報を集め、商品を比較し、加入を決めるといった行動は、比較的若い人で多いが、若いうちは、自分自身の保障ニーズの見極めが難しい可能性があった。

 

図表3、4で示したとおり、真性能動的加入者の加入した生命保険への満足度は高い。疑似能動的加入者は、「まあ満足している」は高いものの「満足している」は、真性能動的加入者を下回り、受動的加入者と同程度にとどまる。加入した保険に「満足している」と感じるためには、自分の保障ニーズを知ることが重要だと考えられた。自分自身の保障ニーズを認識できていないと、どれだけ詳細に保険商品について調べても、その保険商品が自分のニーズを満たしているか判断できないため、不安が残るものと考えられる。

 

2000年頃と比べて、インターネット等を介して、保険商品については、商品の特徴を調べたり、似た商品と比較しやすくなってきている。また、個人が発する情報も増え、利用者の口コミ、会社や担当者の対応に関する評判等を含めて多くの情報を集めることができる。しかし、生活スタイルがますます多様化し、人々が抱えるリスクも多様化してきていると考えられ、自分の保障ニーズを判断することは難しくなっている可能性がある。商品についての情報を得るだけでなく、自分自身の生活設計を行い、自分が必要としている保障を考えることが大切だろう。