都市計画において、住民参加を円滑に進めるためにはどのような情報提供の形が望ましいだろうか。住民の意見を反映することが求められる場面では、コミュニケーション不安が障壁となる場合が多い。本稿では、ニッセイ基礎研究所の島田壮一郎氏が、コミュニケーション不安を軽減するための情報提供の手法について解説する。
〈住民参加における情報提供の課題〉コミュニケーション不安を軽減するための双方向的・段階的情報提供の重要性 (写真はイメージです/PIXTA)

知識提供によるコミュニケーションの円滑化

ワークショップにおけるコミュニケーション

地域の都市計画におけるワークショップでは、住民が具体的なテーマについて議論を行う場として利用されている。ワークショップでは、住民が特定のテーマについて意見を出し合い、それを基に議論を深めていく形式が取られる。このような場では、参加者間の活発なコミュニケーションが議論の質を高める。しかし、参加者によってテーマに対する知識や興味に差があることなどが理由で、全ての参加者がコミュニケーションを円滑に行うことが出来るとは限らない。そのような場面ではコミュニケーションを行うことに対して不安感情を抱き、発言することが出来ないことや上手く伝わらないことが起こる可能性がある。

 

コミュニケーションを阻害する要因

コミュニケーションを行っているときやコミュニケーションについて考えるときに不安感情を持つことをMcCroskeyは「コミュニケーション不安(Communication Apprehension)」という言葉を用いた*。コミュニケーション不安は状況に左右されず、個人が常に持つ特性的なものと状況によって変化する限定的なものがあり、主に以下の4つに分類される。
*McCroskey, J. C. Oral Communication Apprehension: A Summary of Recent Theory and Research. Hum Commun Res 4, 78–96 (1977)

 

・特性的コミュニケーション不安

特性的コミュニケーション不安はその人が常に持っているコミュニケーション不安であり、状況等によって変化しないものである。
 

・状況コミュニケーション不安

状況コミュニケーション不安はコミュニケーションを行う状況によって変化するコミュニケーション不安であり、状況には会議やスピーチ、対話、グループディスカッションなどがある*
*近藤真治 & ヤンインリン. コミュニケーション不安の形成と治療. (ナカニシヤ出版, 1996)


・人物コミュニケーション不安

人物コミュニケーション不安は特定の聞き手が存在するときに感じる不安感情である。例えば、異性との会話や年上との会話の際に不安を感じることなどが挙げられる。


・状態コミュニケーション不安

状態コミュニケーション不安は特定の相手や場面でのコミュニケーションにおいて感じる一時的な不安感情である。4つのコミュニケーション不安の分類の中で最も限定的なものであり、その状態から離れると不安感情がなくなることが特徴として挙げられる。

 

この4つのコミュニケーション不安を比較すると、特性的コミュニケーション不安が最も広域なコミュニケーションに対する不安感情であり、状況コミュニケーション不安、人物コミュニケーション不安の順に限定的になり、状態コミュニケーション不安が最も限定的に起こる不安感情である。