
人気店へと階段をあがっていた矢先に「ラーメン店閉店」のワケ
前田さんが手にした退職金は3,200万円。いつかやってみたいと思っていたビジネスとは……ラーメン店でした。実は前田さん、無類のラーメン好き。結婚30年になるという奥さんとも、結婚前のデートはラーメン店ばかりだったといいます。
――自分が理想とする味のラーメンを食べてもらいたい……ずっと思っていたんですよね
ラーメン店開業に向けて、まずはノウハウを学ぼうとラーメン店でのアルバイトを3年。それから10坪強のラーメン店を開業します。物件の取得費のほか、内装・外装工事、厨房設備、備品、広告宣伝などに合計1,200万円ほどかかったといいます。
飲食店の経営は非常に厳しく、毎年多くの店が新規オープンするものの、3年以内に7割は閉店するといわれています。ちなみに帝国データバンクによると、2024年の飲食店の倒産は894件(負債1,000万円以上、法的整理)と過去最高を記録したといいます。
一方、前田さんのラーメン店は滑り出しは上々。口コミも少しずつ広まり、ピーク時のランチタイムには行列ができることも。ところが前田さんのラーメン店は開店から8ヵ月で休業、そのまま閉店となったといいます。客足もよく、繁盛店への階段を順調に上っていたのに……なぜ?
――健康診断でがんが見つかり、すぐに手術することになって。治療が長引き、店を続けるのが困難になったので、いったん閉める判断をしたんです
【年齢別「がん罹患率」】
20~24歳…24.4/20.2/28.8
25~29歳…41.3/31.4/51.8
30~34歳…76.1/46.6/107.0
35~39歳…125.4/68.9/183.6
40~44歳…210.7/113.5/310.7
45~49歳…314.6/185.5/446.8
50~54歳…435.9/329.4/543.5
55~59歳…629.3/615.5/643.1
60~64歳…945.5/1,109.3/785.7
65~69歳…1,375.2/1,786.6/986.9
70~74歳…1,819.7/2,520.1/1,193.6
75~79歳…2,247.6/3,262.3/1,432.9
80~84歳…2,382.7/3,515.4/1,585.8
※数値左より、男女計/男性/女性
※数値は人口10万人あたりのがん罹患率
※厚生労働省『全国がん登録(2020年)』
わずか8ヵ月で終わった挑戦。「こんなことなら、定年まで勤めあげたらよかった……そんな後悔をしているかと思えば、そんなことはないようです。
――がんがわかったとき、「何かの間違いでは?」と思いましたが、仕方がないですよね、こればかりは。年齢的にも病気のひとつやふたつ、かかるころですし。まったく後悔はしてないです。中途半端に終わってしまったし、出店費用を回収するだけ、まだ儲けてもいない。でも、長年の夢に向かって挑戦できたことは、この人生において有意義なものだったと思っています
現在、前向きに治療に取り組んでいる前田さん。医者からGOサインが出れば、心配ばかりかけている奥さんを労うために、旅行にでも行こうと計画を立てているといいます。
[参考資料]