現在、多くの企業で60歳定年となっていますが、退職金の優遇などを条件に早期退職を募るケースが増えています。ただリスクを考えると、危ない橋は渡れない……そう思っている人も多いのではないでしょうか。そのような早期退職制度。真っ先に手をあげた人は、何を考えていたのでしょうか。
「会社を辞めてくれたら退職金1,000万円上乗せします」に歓喜の57歳サラリーマン、〈退職金3,200万円〉を手に念願の「ラーメン店開店」。客足上々も、8ヵ月でまさかの閉店「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

早期退職をきっかけに奮起。夢に挑戦するラストチャンス

東京商工リサーチによると、2024年11月15日までの上場企業における早期・希望退職の募集は前年比で1.5倍に増加し、年間1万人を超えることが確実に。景気の先行き不透明感や物価上昇の影響が要因だといいます。

 

そもそも早期退職は、従業員が定年を迎える前に自主的に退職することを可能にする制度。企業が従業員に対して特別な退職金や再就職支援を提供することで、早期退職を奨励するものです。一般的に従業員の個人的な意思に基づいて行われ、企業側の承認が必要となります。

 

早期退職の背景としては、まず「人員調整」。経済状況や業績悪化に伴う人員整理の一環として、企業が従業員の早期退職を促すことがあります。また若手人材の成長を促進し組織の活性化を図ろうと、「年齢構成の調整」を目的に行われることも。

 

そのような早期退職に応募し、定年よりも3年早く会社を辞めたという前田健一さん(仮名・63歳)。早期優遇により、本体の退職金に加えて1,000万円が支給されるという条件に惹かれて申し込んだといいます。

 

【退職金の平均額】

・定年退職…1,896万円

・会社都合…1,738万円

・自己都合…1,441万円

・早期優遇…2,266万円

※厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

 

――あと3年、定年を待つだけという毎日に嫌気が差していました。そのようなときに早期退職の話があり、真っ先に手をあげたんです

 

退屈な日々を打破すること以外に、早期退職にはもうひとつの想いがあったといいます。

 

――「一国一城の主」に憧れ、いつか独立したい、いつか自分でビジネスをやってみたいと思っていましたが、定年したあとに、と考えると難しいと、半ば諦めていました。しかし、60歳になるまであと3年ある。もしかしたらラストチャンスといえるときかもしれない……そう思い切って会社を辞めることにしたんです