親と離れて暮らしていると顔を合わせるたびに年老いていく親の姿に驚き、心配がどんどん大きくなっていくもの。親は親で子どもに心配をかけるものではないと気丈にふるまうのも定番です。そんな親から緊急電話。思わず、ドキッとしてしまう展開で語られることとは?
〈年金15万円〉東北で暮らす72歳の父、真夜中の電話で「助けて!」と悲鳴…明朝、始発の新幹線で駆けつけた44歳長男〈衝撃の光景〉に呆然 (※写真はイメージです/PIXTA)

ある冬の真夜中、父親からの緊急電話…慌てて駆けつけると

東京と東北の実家は、新幹線を使っておよそ4時間ほどの距離。離れて暮らす高齢の親への心配は募りますが、バリアフリーリフォームを施し安心感が増した……というのは、一瞬の出来事だったといいます。

 

その年の冬、母親が道端で転倒し、全治3ヵ月の骨折。リフォームで至る所に手すりを設置していたのが功を奏し、家のなかの移動は何とか困らない程度だったとか。しかし「かあちゃん、家事が全然できないから大変だよ!」と父親の愚痴が止まりません。買い物や料理もままならないので、「食事が出前ばっかりで嫌になっちゃうよ」と畳みかけます。一方、母親は「せっかくの機会だからゆっくりしようかな」と余裕の構え。

 

――骨折が原因で寝たきりになることも多いから、できる範囲で運動しなよ

 

【現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)】

・要介護1

認知症…26.4%、脳卒中…14.5%、骨折・転倒…13.1%

・要介護2

認知症…23.6%、脳卒中…17.5%、骨折・転倒…11.0%

・要介護3

認知症…25.3%、脳卒中…19.6%、骨折・転倒…12.8%

・要介護4

認知症…28.0%、脳卒中…18.7%、骨折・転倒…14.4%

・要介護5

認知症…26.3%、脳卒中…23.1%、骨折・転倒…11.3%

出所:厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

 

そんなアドバイスを母親にしてから数週間後の夜のこと。突然、大輔さんの携帯電話が鳴りました。時刻は夜、23時をまわっています。嫌な予感がして電話に出ると、第一声は父親の「助けてくれ!」との悲鳴だったので、大輔さんも我を忘れて焦ったといいます。翌日、朝一の新幹線で実家に向かう大輔さん。実家に着いたのは正午近くになっていました。そこで大輔さん、衝撃の光景を目の当たりにします。

 

確かに大輔さんは実家に到着。しかし、とても玄関にたどり着けそうもないのです。大雪で埋まる家。さらに家の前を除雪車が通り、置いていった硬く、重い雪が家の門を塞いでいます。あまりの光景に呆然とする大輔さん。家の玄関付近からは、父親が「おーい」と呼んでいます。

 

この数日、ずっと雪かきをしているという父親。家の前はロードヒーティングにしているものの、それが効かないほどの記録的な大雪。さらにいつもの冬なら夫婦ふたりで何とか除雪してきたけれど、今年の冬は父親だけの1馬力。足腰も限界で、つい、大輔さんに助けを求めてしまった……という顛末でした。

 

――大輔が来なかったら、このまま家から出られず死んでしまうかと思ったわ

 

大輔さんも加わり除雪をしたことで、その日の夜には何とか家から出られるようになったといいます。

 

バリアフリーリフォームをしても、厳しい自然を前には太刀打ちできないことが浮き彫りに。大輔さんは家の維持という点で高齢の両親が戸建てに住み続けるのは難しく、利便性のいい駅前のマンションにでも引越してはどうか、と提案。しかし両親としては「できればここで死にたい」というほど、マイホームへの愛着が難しく、引っ越すという選択肢はないよう。平行線をたどり続ける親子の想い。とりあえず、家庭用の除雪機を買ってあげることにしたという大輔さん。家庭用の小型除雪機、25万円(税抜き)。大きな出費にため息がこぼれたといいます。

 

内閣府『令和6年高齢社会白書』によると、住み替えを希望する高齢者は、将来的に検討したいという人たちも合わせて約3割。その理由1位は「健康・体力面で不安を感じるようになったから」で24.8%。続けて「自身の住宅が住みづらいと感じるようになったから」は18.9%でした。住み心地は年齢とともに変化するもの。マイホームであっても住み続けることは意外と難しいことなのかもしれません。

 

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

内閣府『令和6年高齢社会白書』