2025年度の年金額改定の背景には、物価上昇率や賃金の動向など、複雑な経済状況がある。年金額は昨年の物価上昇を反映して増額される一方、実質的には目減りする可能性が高いとの試算も出ているなか、これらの動向年は金財政にどのような影響をあたえるのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫氏が、2025年度の年金額改定の詳細とその注目点について解説する。
2025年度の年金額の見通しは1.9%増で、年金財政の健全化に貢献…2025年度の見通しと注目点 (写真はイメージです/PIXTA)

2025年度の見通し(筆者試算):名目額は前年度比+1.9%の見通しだが、実質的には目減り

2025年度の年金額は、2025年1月24日に公表された1。本シリーズ(前後編)では、年金額改定の仕組みを確認し2、現時点のデータに基づく粗い見通しと注目ポイントを考察する。本稿(後編)では、前編3で確認した年金額改定のルール([図表1])を踏まえて2025年度の見通しを試算し、その注目点を確認する。

 

[図表1]年金額の改定ルール(2021年度以降)

 


年金額の改定は、前年(1~12月)の物価上昇率が発表される日(原則として1月19日を含む週の金曜日)に公表される。

 

より詳しい仕組みや経緯は、拙稿「年金額改定の本来の意義は実質的な価値の維持-2024年度の年金額と2025年度以降の見通し(1)」「将来世代の給付低下を抑えるため少子化や長寿化に合わせて調整-2024年度の年金額と2025年度以降の見通し(2)」を参照。

 

拙稿「2025年度の年金額の見通しは2.0%増で、年金財政の健全化に貢献 (前編)-年金額改定の仕組み

 

改定に関係する指標の動向:物価と賃金は上昇。加入者は適用拡大の影響で増加

年金額改定に関係する経済動向を確認すると、[図表2]のようになっている。

 

[図表2]年金額改定に関係する経済動向(前年同月比)

 

(1)物価上昇率:2~9月は安定的に推移し、2024年(暦年)平均では+2.6%と仮定

物価上昇率は、2025年度の改定に影響する2024年(暦年)の動向のうち、10月までは実績が判明している。1月は前年の上昇率(前年同月比)が高かった反動で+2.2%だったが、2~9月は+2.5~3.0%の範囲で推移し、10月は+2.3%となった([図表2]左)。今後については、弊社の経済見通し(2024年11月18日公表版4、四半期ごと)では10~12月の平均を+2.6%と想定している。これらを考慮して、2024年(暦年)の物価上昇率を+2.6%と仮定する。

 


斎藤太郎「2024~2026年度経済見通し(24年11月)」