(写真はイメージです/PIXTA)
環境の変化で見えた「どうしても嫌だったこと」
一方、新天地で働き始めて「どうしても嫌だったこと」もありました。
ずばり! 人間関係です。「合わないな」と思う人と我慢して働くのが、自分にとってこんなにつらいとは……。
わたしが参加したプロジェクトは、主にわたしが所属する営業企画部のほかに、商品企画部(サービスを作って運営する人たち)・営業部(商品を売る人たち)という3つの部署が密にかかわって売上を作っていくものでした。メールや社内チャットがピコピコ鳴り止まないほど、彼らと頻繁にやりとりし、毎日のように会議で顔を合わせるなど、つねに連携をとって働く必要があったんです。
その中で、営業部のリーダーが、わたしにはとても苦手な存在でした。会議中、自分よりも上席がいないときだけ「ふざけんな」「そんな施策やりたくねえ」「俺は許さん」などの強い言葉を連発し、参加メンバーを威圧したり。他部署の誰かが少しでもミスをすればしつこく詰めて、会議が進まなくなったり。さらには、みんなでじっくり議論して決まった運用ルールでも、自分の好まないルールは裏でこっそり破って強行突破する様子を目撃したりもしました。
彼の言動に精神的に参っているプロジェクトメンバーも多く「さすがに暴走しすぎでは……?」と思っていたら、わたしが入社してからわずか1年弱の間に3人のメンバーが休職する事態に。
だんだん「嫌だなぁ……」という気持ちが募りますが、それでもせっかくの恵まれた環境です。わたしとしてはいたずらに転職回数を増やすことも避けたいところ。そこで、どうにか対話を重ねて彼を理解しよう・自分の意見を理解してもらおうとも試みましたが、新入りのわたしの話には聞く耳を持ってもらえず撃沈。
上司に相談してみるも、苦笑いで「彼は古株で上役にも好まれているから、接するのが大変だよね……。僕も注意はしてみるけど、それ以外に自分なりにもプロジェクトが円滑に進むように工夫してみてほしい」となだめられてしまい、すぐに劇的な改善は見込めませんでした。
彼が異動や退職でいなくなるまで待つか、自分の異動願いが通るほど大きな成果を出すまで耐えるか。でも、仮にどちらかで彼との問題が解決したとしても、いつ同じようなタイプの人と一緒になるかわからない。なんだか終わりが見えない悩みです。しだいにわたしは、「どうしたら会議で彼の機嫌を損ねずに話を聞いてもらえるか」「事前にどのように根回しをすれば彼が暴走しないか」など、彼との人間関係について考える時間が長くなっていきました。
でも、自分の時間やエネルギーにはどうしても限りがある中で、その多くを人間関係の悩みのために使ってしまうと、本来やりたい「利益につながるアイディアを出すこと」「みんなが売りやすい仕組みを整えること」にリソースが使えなくなっていく。この抜け出せないジレンマが、わたしの心をどんどん曇らせ始めました。
結果として、このときわたしにとって「働く人を自分の意思で選べない」というのはすごく怖いことだな、と感じたことが、のちに起業するという選択につながりました。
土谷 愛
mideal inc.
代表取締役社長