少子化対策をするうえで、出生率を一つの目安にする自治体は多い。しかしながら、統計上出生率の低さと少子化速度に関連はないとされる。では、何を指標として少子化対策を取ればいいのだろうか。そこで本稿では、少子化対策における重要な指標について、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が詳しく解説する。
2013~23年都道府県出生減(少子化)ランキング。合計特殊出生率との相関は「なし」 (写真はイメージです/PIXTA)

東北地方、中部地方の広域雇用人口ダムの決壊

次に、出生数減少率が全国平均以上の高水準、かつ3割減のエリアが20エリア存在する。これらのエリアを見ると、ワーストランキング上位の12位に宮城県がきており、3割減(34.9%)とはいうものの4割減に極めて近い減少率となっている。東北地方に関しては、主たる女性移動先と一般的に信じられてきた宮城県が東北地方の人口ダムの役割を果たすことができず、地元から多くの女性を東京都に就職期に転出超過させて社会減エリアとなっており、このような状況では東北地方全体としても人口の未来は極めて厳しい状態にあるといえる。

 

さらに2019年以降、愛知県が転出超過エリアに転じ、東京一極集中に関して大阪府の次に貢献しているエリアとなっているため(集中人口の10%が愛知県からの移動による純増)、中京圏の雇用人口ダムも決壊が生じている。そのため、東京圏に就職する女性が増え(≒愛知企業より東京圏企業を選ぶ傾向が強化)、静岡、岐阜、三重(5.14.15位)、といった中京圏エリアにおいて、出生減率がワースト上位にあがってきている状況にも注意したい。

 

中部エリアにおいて今後警戒したいこととして、2027年の東京~名古屋間のリニア開通(予定)がある。東北新幹線開通後も、東京圏の労働市場に東北地方の労働者が新卒就職期に最も多く流入し続けているように、中部地方と東京の間のリニア開通による「ストロー効果」が懸念される。中部地方において、令和時代の若者のライフデザインにあった労働市場の整備が東京圏より遅れている現状のまま開通すれば、女性社会減加速からの自然減加速、という負の出生減スパイラルが強まる可能性が高い。