「愛着障害」とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。そのため小児に限られた病名ですが、昨今は「大人の愛着障害」も増えていると、精神科医・村上伸治氏は指摘します。現代社会の病「大人の愛着障害」を抱える人には、特徴的な思考法がみられます。本記事では、同氏監修の書籍『大人の愛着障害:「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、愛着に問題を抱える人の思考法について解説します。
“自己肯定感の低い人”が“人を助ける仕事”を選びやすい理由【精神科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

自己否定的、自責的であることでかろうじて生き延びてきた

愛着に問題を抱える人には、特徴的な思考の歪みが見られます。そのひとつが自己否定的思考または自責思考です。

 

「自分がわるい」と思うことで、状況を受け入れられた

患者さんのなかには「5歳から死にたいと思っていた」という人もいます。極端なケースですが、このような場合愛着にトラウマも関わっていると見られます。愛着とトラウマは併存することがよくあるのです。このようなトラウマは記憶のフラッシュバックだけではなく「ものごとをすべて否定的に捉える」という症状もともないます。

 

背景に考えられるのが、幼少期のつらい体験です。子どもはつらいことがあると「自分がわるかった」と考えることがあります。つらさを誰かに一緒に受け止めてもらい「よしよし」と安心させてもらわないと、自分ひとりで気持ちを処理するために自責思考へと至ります。いわば、生きるための手段でもあるわけです。

 

家族が病死したり事故にあったりしても、すべて「自分のせい」と思い込んでいる子どもは意外に多いのです。いったんそれで説明がつくと、その自責思考はずっと心に棲み続けます。

 

外から入ってきた思考だと気づくことが大事

こうした自責思考は生まれつきのものではありません。「5歳から死にたいと思っていた」という人はそれほど多いわけではありませんが、その患者さんも小さいときは普通に素直な乳幼児だったはずです。

 

それなのに、知恵がついてきたどこかのタイミングでなにかつらい体験があり、それを乗り越えるために自己否定的な思考をするようになったのでしょう。つまり、自責思考はもともと心にあったものではなく、外部から入ってきた異物なのです。

 

私はそうした思考を「寄生虫のようなもの」と患者さんに伝えます。このような思考パターンは外から侵入して毒をまき散らす「異物」なのに、本人はそれを自分自身だと思い込み、苦しみ続けているのです。まず自責思考は自分ではなく、異物なのだと認識してください。そうすれば、自分を苦しめる異物を叩き出すことができるでしょう。