
銀行の貸金庫
昨年、三菱UFJ銀行で銀行員が支店の貸金庫から時価十数億円の金品を盗み出したニュースが話題になりました。貸金庫を借りている人達は、一体貸金庫になにを入れているのでしょうか。また、銀行員は、貸金庫の中を自由に見ることができるものなのでしょうか。さらに、貸金庫を利用している人が亡くなった場合、相続人はどうしたらいいのでしょうか。
相談者のAさんの例でみていきましょう。
父親の遺産は預貯金、不動産、有価証券だけにとどまらず…
48歳のAさんは、大企業の企画部長として勤務していた経歴のある76歳の父親を急な病気で亡くしました。父親は企業年金なども含め、年金を月額30万円ほど受け取っており、預貯金だけでも5,000万円ほど遺してくれました。遺品整理をしていたところ、父親の生前にあまり使われていなかった机の引き出しの中から把握していなかった銀行の通帳と貸金庫のカードを発見します。預貯金のほか、すでに不動産や有価証券を調べていたところですが、「まだあるのか」と相続の手続き等に疲れてきたAさんは半ばやれやれという気持ちに。電話で銀行に問い合わせてみました。
亡くなった父親の相続人はAさんのほか、認知症で介護付き老人ホームに入居中のAさんの母親と、Aさんの3歳年下の弟の3人です。
貸金庫に預けられるものは、契約証書や権利書といった重要書類をはじめ、貴金属や宝石といった貴重品、ほかにも写真や手紙などの思い出の品などです。貸金庫はサイズによって年間1万円~5万円といった費用で借りることができますが、当然誰もが借りられるものでもなく、金融機関独自の審査がありますので、それなりの資産を持った人が対象になります。
Aさんの父親は、会社員のころから通勤で利用する駅のそばの銀行に口座を作っていたようで、そちらで貸金庫も利用していたようです。
家族すら知らない貸金庫を税務署が知っている理由
被相続人が貸金庫を利用していた場合、中身は相続の対象となりますので、相続手続きを取らなければいけません。
貸金庫を借りていたことを知らなかったとしても、自治体に死亡届を提出すると税務署に通知が行き、税務署は亡くなった人の預金口座の内容や残高を金融機関に照会する権利を持っています。そのため、貸金庫を利用していたことはやがてわかってしまいます。
税務調査では貸金庫まで同行し、中身をチェックされます。相続税の申告を終えたあとに貸金庫の存在が発覚した場合は、早急に修正申告してしまいましょう。
なお、貸金庫は銀行員が勝手に開けることはできません。契約者(生前に登録した代理人)だけが開けられるようになっています。そのため、銀行側は貸金庫の中身は把握していませんので、貸金庫の相続手続きは預貯金の場合に比べて厳しくなっています。
相続人が貸金庫を開けるときには公平性の確保のため、相続人一人だけでなく、貸金庫を開けることについて相続人全員からの同意が必要だったり、相続人全員の立ち合いが必要だったりします。