定年を迎え、その後、仕事を完全に辞めて年金生活をスタートさせたとき、どのように過ごすか……イメージできますか? それまで仕事一辺倒だった人のなかには「何もすることがない」と途方に暮れるケースも珍しくないそうです。一方で「仕事を辞めたらやりたいことがある」と心に秘めていることがある人も多いようです。
ずっとやってみたかった…〈年金月20万円〉65歳・真面目すぎる元教師の夫が覚醒。わずか1年で失った「貯金額」に妻、絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳元教師…現役引退後に目覚めたのは、まさかの推し活

65歳から始めたのは推し活。しかも推しているのはアイドルだというから驚きです。ハマるきっかけはテレビ。大勢のアイドルが歌い、踊っている姿に衝撃を受けたといいます。

 

――私が子どものころのアイドルといえば、天地真理さんとか南沙織さんとか。高校生くらいに山口百恵さんとかがいて、そのあたりでアイドルの記憶は途絶えているんですよね。だから、今どきのアイドルと呼ばれている子たちの姿をみて、すごくびっくりしたんですよね

 

それからたくさんの動画をみるようになり、すっかりハマってしまったという小林さん。一番興味深かったのはコンサートだったといいます。

 

――コールアンドレスポンスがすごい一体感で、本当に楽しそうで。実際にライブに行ってやってみたいと、ずっと思っていたんですよね

 

ただ応援しているのは若い人たちで、高齢男性がアイドルを応援なんて……そう思っていました。そんなとき、こっそりやっていたSNSに1通のメッセージが。送り主は60代という年齢に興味をもったという、同じアイドルを推す20代の若者だったといいます。頻繁にやりとりをするようになったのち、同じアイドルを推すグループのオフ会に参加。10人ほどいましたが、ほとんどが40歳以上も離れた若者たち。しかしそのなかに、比較的小林さんに年齢が近い男性がいたといいます。

 

――近いといっても15歳、20歳くらい年下なんですが。しかし彼から「好きなものを応援する気持ちに年齢なんて関係ないじゃないですか」といわれ、ハッとしたんですよね

 

それまでアイドルを推していることをひた隠しにしていましたが、彼の言葉をきっかけにすべてをオープンに。突然、アイドルを応援するようになった小林さんに、家族はみな驚いていたといいます。

 

そしてコンサートに初参戦するとさらにハマり、全国で開催されるライブにも時には宿泊して参戦。本でいっぱいだった自宅の書斎は、推しのグッズで埋まりました。「ずっとやってみたかった」ということをすべてやりきった結果、出費は300万円以上になりました。これには小林さんの妻も言葉をなくしていたといいます。貯金口座からどんどんお金が減っていくわけですから、仕方がないことです。

 

――ちょっとタガが外れてしまって……妻にはヒドク怒られて、カード類はすべて没収されました

 

小林さん、受け取っている年金は月20万円。夫婦の生活費もこの年金から捻出していますが、このなかで無理のない範囲で推し活をするよう、心がけているといいます。

 

 

[参考資料]

内閣府『令和4年度 高齢者の健康に関する調査』

株式会社日本総合研究所『「高齢者の生きがい等意識調査2024」』