2025年、団塊世代が後期高齢者となり、超高齢社会が本格化する日本。高齢者の就労はますます重要な課題となるなか、定年退職後の生活設計の甘さや、再就職の難しさが浮き彫りになっています。物価上昇が続く現代において、老後資金は本当に足りるのでしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともに高齢者が直面する課題について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
高収入を理由に家で威張り散らかしていたが…年金月31万円見込み、定年退職後に58歳妻と立場逆転「64歳・元大企業総務部長」の末路【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

いよいよ「2025年問題」超高齢社会本格化へ

2025年に入り、団塊世代がすべて後期高齢者となる「2025年問題」といわれる雇用・医療・介護・年金といった分野への多大な影響が表面化する時代に突入しました。団塊ジュニアもすでに50代になっており、日本の超高齢社会問題は今後30年以上は続く、と考えられます。今後も円安や人手不足による物価上昇は続きますので、健康でできるだけ長く働き続けることは非常に重要になってきます。

 

総務省の発表※1によると、我が国の総人口(2024年9月15日現在推計)は、前年に比べ59万人減少している一方で、高齢者の人口は、

 

・65歳以上人口:3,625万人 前年比2万人増加
・70歳以上人口:2,898万人 前年比9万人増加
・75歳以上人口:2,076万人 前年比71万人増加
・80歳以上人口:1,290万人 前年比31万人増加

 

となっています。総人口に占める65歳以上人口の割合は、4.9%だった1950年以降上昇を続けており、1985年に10%、2005年に20%を超え、2024年は29.3%と過去最高を更新しています。さらにこの割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には34.8%、2045年には36.3%になると見込まれている、としています。
 

出所:総務省 報道資料 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-※
[図表]65歳以上人口及び割合の推移(1950年~2045年) 出所:総務省 報道資料 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-※1

 

高齢者の就業状況

2023年の65歳以上の就業者数は、2004年以降、20年連続で前年に比べ増加し、914万人と過去最多となっています。内閣府の令和6年版高齢社会白書によれば、男女別の就業状況は、

 

<男性>
・60~64歳:84.4%
・65~69歳:61.6%
・70~74歳:42.6%

<女性>
・60~64歳:63.8%
・65~69歳:43.1%
・70~74歳:26.4%

 

となっており、65歳を過ぎても多くの人が仕事に就いているのがわかります。

 

「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、物価上昇が止まらないため、2,000万円では当然足りないと予想されます。生命保険文化センターによる令和4年度「生活保障に関する調査」では、夫婦2人の老後の最低日常生活費は月額23万2,000円、ゆとりある老後生活費は月額37万9,000円としています。


さらに総務省の令和5年家計調査報告※2によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入から税金や社会保険料等を差し引いた可処分所得が21万3,042円に対して、消費支出は25万959円で毎月約3万8,000円の不足がわかります。

 

また、老後2,000万円問題の計算には、医療や介護費用などが含まれていませんし、ほかにも家電・車の買い替えやリフォーム費用といったまとまった出費もあることを考慮して、現役時代から老後の生活に備えたマネープランニングが必要になります。