2025年、団塊世代が後期高齢者となり、超高齢社会が本格化する日本。高齢者の就労はますます重要な課題となるなか、定年退職後の生活設計の甘さや、再就職の難しさが浮き彫りになっています。物価上昇が続く現代において、老後資金は本当に足りるのでしょうか? 本記事では、Aさんの事例とともに高齢者が直面する課題について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
高収入を理由に家で威張り散らかしていたが…年金月31万円見込み、定年退職後に58歳妻と立場逆転「64歳・元大企業総務部長」の末路【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

3日でギブアップ、パチンコ店へふらり

売り言葉に買い言葉で働く宣言をしてしまったAさんでしたが、当然簡単に仕事がみつかるわけがありません。特にこれといった資格や技術など持っていないAさんには1日中立ちっぱなし、もしくは身体を使った仕事しかありません。

 

Aさんは仕方なく、日払いの倉庫でのアルバイトを始めました。しかし現役時代はデスクワークでしたし、定年後は家でゴロゴロしていたため、身体がもつわけがありません。自分より年下の管理者に嫌味をいわれたり、息子より若いアルバイトの男の子に冷たい目で見られたりもしました。足腰が痛くて結局3日しか続かず、4日めには「仕事に行く」と嘘をついて、そのままパチンコ店に向かってしまいました。

 

帰りに寄った喫茶店でAさんはこれからどうしよう、と考えます「定年退職まで我慢して働けば悠々自適の生活が待っていると思ったのになぁ。考えてみれば息子や女房みたいに『やりたい仕事ややりがいのある仕事』は人生のいままで見つけることができなかったなぁ。俺は女房みたいに明るく元気に仕事には行けないよ」。

 

〈参考〉

※1 総務省 報道資料 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-

https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics142.pdf

※2 家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2023.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表