円高に30年以上にも及ぶ経済の停滞。日本の地位低下が叫ばれているなか、私たちの給与もあがる気配はありません。このまま日本全体が沈んでいく……多くの人がそんなイメージを抱いている一方で、180度異なる景色をみている人たちも。本当の日本の姿は?
「手取り27万円」…ますます拡大する「経済格差」に戦慄。知らぬうちに中流から脱落する「平均的サラリーマン」の悲惨 (※写真はイメージです/PIXTA)

上流意識が高まる…「日本人の本当の姿」

2023年の名目GDPは、日本が4.23兆ドル、ドイツが4.43兆ドルと日本を上回り、世界3位の経済大国の座を明け渡し、大きな話題になりました。名目GDPはドル建て換算して比較すると為替レートの影響を大きく受けますが、「失われた30年」といわれるように、日本経済自体が停滞を続けているのは事実です。

 

さらに私たちの給与も悲惨なことになっています。厚生労働省『毎月勤労統計調査』によると、最新となる昨年10月の月間現金給与額は29万2,430円で前年比2.2%増。一般労働者では37万4,161円で2.5%増、パートタイプ労働者では10万9,925円で3.4%増でした。しかし実質賃金は前年比マイナス0.4%減。インフレ率が賃金増を上回り、実質給与減となっています。

 

実質賃金は昨年6月に27ヵ月ぶりに前年を上回り、さらにその翌月も前年比プラスを記録。2年以上に及ぶ賃金減の悪夢から抜け出せるかと思いきや、8月には再び実質賃金はマイナスを記録しています。春闘で「賃金アップ!」と叫ばれていましたが、ベースアップには至らず。一時的に賞与で還元したため、賃金増に見えただけだったわけです。肌感覚としては賃金減は続いており、その状態がいよいよ3年に及びそうです。

 

このようにみていくと、まるで日本全体が沈みかけているように思えてきますが、現実は違うようです。内閣府による「国民生活に関する世論調査(令和6年8月調査)」によると、「あなたのご家庭の生活の程度は、世間一般から見て、どうですか」の問いに対して、「上」と回答したのが1.7%、「中の上」が14.2%、「中の中」が46.7%、「中の下」が28.1%、「下」が8.7%。89.0%が「中」と回答し、まさに日本人の大多数が「自分は中流」と自覚しています。

 

しかし経年でみていくと、昨今は変化がみられます。1964年の調査開始以来、50%台(調査年によっては60%台)だった「中の中」は2020年代に入り40%台に。一方、近年増えているのが「上」と「中の上」。20年前と比較すると、2004年、「上」は0.7%、「中の上」は9.6%だったのが、それぞれ1ポイント、4.6ポイント上昇。一方、「中の中」は6ポイントほど減少しています。つまり少数派ではあるものの、中流から上流へとランクを上げている人がいる一方で、中流から脱落している人も……昨今、経済格差が拡大しています。

 

野村総合研究所によると、日本の富裕層(純金融資産保有額が1億円以上)は148.5万世帯。2005年は86.5万世帯だったので、この20年で「お金持ち」は1.7倍に。

 

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマン(正社員)の平均給与は月収で36.3万円、賞与も含めた年収が596.9万円。手取りにすると月27万円、年460万円ほど。お金持ちが増加している一方で、「給与、上がらないなぁ」とボヤキが止まらない平均的なサラリーマンは中流からも脱落……それが日本の本当の姿なのかもしれません。

 

[参考資料]

厚生労働省『毎月勤労統計調査』

内閣府『国民生活に関する世論調査(令和6年8月調査)』

株式会社野村総合研究所『野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』