認知症の母を介護する長男…生活費は母の年金を充てにしていたが
実家で80歳になる母と暮らす、小林和彦さん(仮名・62歳・未婚)。仕事を辞めたのは2年前。60歳の定年後も引き続き働くつもりでしたが断念しました。
――当時、母は実家でひとり暮らしをしていたのですが、モノをなくして「どこにやったか知らないか?」などと連絡が来るようになったのです。様子がおかしいので病院に連れて行ったら認知症と診断されました
大きなショックを受けた小林さん。それ以上に、母・本人がショックを受けていたといいます。そばにいてあげたい、しかし、年金受給が始まる5年の間、収入がなくなるのは怖い……いろいろと考えた結果、母に寄り添うことを選びました。
――母は亡くなった父の遺族年金を含め、月16万円ほどの年金をもらっていました。私も多少は貯金もありましたし、親子2人くらいであれば、母の年金だけでも暮らせるだろうと考えたんです
同居を始めた当初は、直前の出来事を忘れたり、同じことを何度も聞き返したり、そのような程度でしたが、診断から2年ほど経った現在では、住所や電話番号が言えなくなったり、場所や日付がわからなくなったり。外を出たまま帰ってこられなくなり、警察に保護されることもあるといいます。
認知症の症状が進行するなか、事件は起きます。聞いたことのない法律事務所から1通の手紙が届いたのです。その内容は「母親の成年後見人に選任されたため、通帳等を引き渡してほしい」というもの。新手の詐欺か……と思い、放っておいたという小林さん。しかし、次の年金受給日に思いもしない事態に直面します。
――母の口座が凍結されていたんです。銀行員に聞いても「申し訳ありませんが、お手続きできません」の一点張りで、思わず「年金なしにどう生きていけというんだ!」と怒鳴ってしまいました。完全に冷静さを失っていましたね
実は仲の悪い姉がいるという小林さん。実家とも疎遠で、ほとんど顔を合わせることがないといいます。
――私には後見のことは知らせないようにといろいろ理由を並べて、裁判所も丸め込んだのでしょう。母の世話もしないのに、なぜこんな嫌がらせを……