住宅購入価格の高騰を背景に、ペアローンを検討する人が増えています。ペアローンにより、借入可能額が増えることで、より高額な物件や立地のよい物件など、選択肢が広がることが検討する理由のようです。また、住宅ローン控除の二重適用という税制上のメリットも。一方で、リスクも無視できません。近年、離婚件数が増えていることに着目しましょう。ペアローンを組んだ夫婦が離婚をすると……。本記事では、Dさんの事例とともに、ペアローンでの住宅購入によるリスクについて、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
一生一緒にこの家に住もうね…一転、2年も経たずに離婚へ。世帯年収1,150万円・30代夫婦の大後悔、ペアローン購入で“絶対避けるべき”と痛感した「間取り」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

購入時は離婚なんて想定していなかった…

住宅を共有名義で購入することのリスクは離婚と理解していても、実際は離婚なんて想定していないことがほとんどです。Dさん夫婦もそうでした。

 

Dさん:34歳 会社員 年収550万円

妻:36歳 会社員 年収600万円

注文建築の戸建てを夫婦で共有

土地購入・建物建築のために連帯債務型で5,000万円のローンを利用

 

Dさんたちは、結婚して半年後に郊外に土地を購入し、翌年には理想の家を手に入れることができました。

 

マイホームのこだわりポイント

・吹き抜け天井で開放感あふれるリビング
・Dさんの趣味のギターを弾くための防音室
・間接照明を取り入れてリラックスできるよう大きめのバスルームに
・妻の希望でキッチンから洗濯機、物干しスペースへの効率的な動線設計

 

このように、「一生この家に住むんだ」と、夫婦で家造りを楽しんでいました。

 

離婚による財産分与

しかし2年も経たないうちに価値観の違いなどから夫婦仲が冷え込み、離婚することになってしまったのです。そしてDさんこだわりの家が、財産分与で問題に。

 

Dさんは、こだわりが詰まっているこの家に1人になっても住み続けたい。なんとか節約すれば1人でローンを払っていくことはできるかもしれないですが、妻の持分を清算する資金がないというのが問題です。妻は「この家は職場まで遠いし、いらない」といっており、Dさんが住み続けるならローンは連帯債務者からDさんの単独債務にしてほしいというのが希望です。 

 

ローンを利用している銀行にも相談しました。妻の持分をDさん単独名義にするために、連帯債務からDさん単独の債務に変更できないだろうかと。しかし、かなりまとまった金額を一部繰上げ返済するなど借入金額を減らさない限り、Dさんの単独債務に変更はできないという回答でした。

 

しかし、一部繰上げ返済の余裕なんてありません。金利のメリットより諸費用がかかるのは承知のうえで、ほかの銀行にDさん単独の住宅ローンに借り換えようとしましたが、「Dさん単独では審査が通らない」との回答。

 

仕方なく、不動産業者にも売却の相談をしましたが、防音室などのこだわり、このエリアの相場など売却価格といった点で買い手が見つかるまで時間がかかるという回答が。特に吹き抜け天井によって買い手に案内しても、

 

・冷暖房効率の低下

・音が反響しやすく、プライバシーが確保しにくい

・高所の窓掃除や照明器具の交換などが困難であることによるメンテナンスの難しさ

・2階の床面積が減り、居住スペースが狭くなる

・天井が高い分、家具の配置が難しい

 

といった理由で断られることが多かったそうです。Dさんは頭を抱えてしまいました。