「愛着障害」とは正確には小児に限られた病名です。大人の場合、愛着障害とはいえないため、精神科医・村上伸治氏は広く「愛着の問題」と呼んでいます。現代社会の病「大人の愛着障害」とは? 本記事では、同氏監修の書籍『大人の愛着障害: 「安心感」と「自己肯定感」を育む方法』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、愛着の問題を抱える原因を解説します。
跡継ぎに男児を…祖父母・両親の期待が弟に集中した代々続く造り酒屋の三女、大人になって起きた「大問題」 (※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが自ら察してがまん

子どものほうから愛着形成のサイクルを止めてしまう場合があります。親が忙しかったり大変そうだったりすると、子どもがそれを察して、自分から愛情要求を止めてしまうのです。こうした傾向は、生まれつきの性質によるものでしょう。幼くても周囲の状況や他人の表情を敏感に感じとれる子や、その場の状況に対して、適切なふるまいができる子がいます。親が忙しそう、つらそうだとわかると、自分の要求を控え、親が望むように行動してしまいます。

 

子どもをかまえないほど忙しい親と、このタイプの子のくみ合わせになると、愛着形成は双方からストップしてしまいます。親からすると、子どもが早熟で自立したように見えるため、「もうあなたは大丈夫ね」と安心して子どもから離れてしまいます。手がかからないしっかりした子ども時代を過ごしたように見えますが、本当はもっと甘えたかったという思いを抱えている人が多いのです。

 

2〜3歳でも人の様子を観察し、顔色を見て行動する子がいます。親御さんのタイプとのくみ合わせで愛着の問題を起こしやすくなります。

子ども側にこんなことはなかっただろうか?

・親の家事を手伝うと、機嫌がよくなるので、嬉しくて率先してやっていた。

・親の疲れた表情を察知し、甘えたい気持ちをおさえ、ひとりで遊んだことがあった。

・家計の苦しさを感じとり、ほしいものをねだらなかった。

・親の仕事の忙しさを理解し、悩みを相談せず、自分で解決しようとした。

・小さい頃から親には悩みを打ち明けたことがなかった。

・自分の喜怒哀楽の感情を表現することにいつもためらいがあった。

・両親が不仲で、板挟みになり、双方に気をつかい甘えなかった。

・親からいつも「あなたのために〜しているんだから」と言われていた。

・「いやだ」「さみしい」「助けて」「早く来て」といった要求を伝えるのが苦手だった。

 

 

村上伸治

精神科医