子ども時代の教育は、仕事や結婚生活など大人になってからの人生にも大きく影響します。ここでは子ども時代の教育として、幼児期に焦点を当て、小学生になるまでに特に身につけるべき能力について、モンテッソーリ国際資格保持者である中内玲子氏が解説します。本記事は、中内玲子氏の著書『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
恐ろしい…「“魔の二歳児”のような大人」はなぜ生まれてしまうのか?【モンテッソーリ国際資格保持者が解説】

学力も左右する「実行機能」

意志力と似たものにハーバード大学子ども発達センターが提唱する「実行機能」があります。実行機能は、自己制御能力とも呼ばれ、重要なことに集中し、計画を立て、目標を達成するための力です。一生涯の能力の鍵となる要素で、「人生のコアとなるスキル」であるとされています。

 

実行機能は、空港の管制システムのようなものです。たとえば、子どもたちが「きちんと並びなさい」「おやつは何時」「お片づけをしましょう」など、さまざまな指示や情報を受けながら、それらを整理して今必要ではないものを排除し、「やるべきこと」に集中する力です。

 

実行機能は生まれて数年の間に大きく発達し、青年期まで発達します。ハーバード大学子ども発達センターでは、大人になるまでに実行機能を鍛えないと「魔の二歳児」のような大人になり、仕事や結婚生活、子育てに支障が出て、社会の一員として人と関わることが難しくなると指摘しています。

 

実行機能は、「作業記憶」「自己抑制能力」「思考の柔軟性」によって成り立つとされています。たとえば、お友だちと順番でゲームをする場合、「自分の番が来たときにカードを引く」と覚えておくのが「作業記憶」です。自分の番が来ていないのにカードを引きたい衝動を抑えるのが「自己抑制能力」、ほかの子が予想外のことをしたときに全体のルールを考えて調整するのが「思考の柔軟性」です。

 

ここでも「実行機能」と「自己抑制」、つまり「やる力」と「やらない力」が重視されているのです。実行機能も脳と大きく関わり、脳の神経回路を強化することで実行機能が鍛えられると言われています。

 

幼稚園や保育園では、「静かに待つ」「先生の指示を聞き、その通りに行動する」「片づけや身支度をする」など、実行機能を鍛える場面がたくさんあります。小学校に上がるまでに幼稚園や保育園、そして家庭で実行機能の練習を積み重ねることで、小学生になるための準備ができます。
 

 

中内 玲子

日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool

創立者