将来への不安が尽きない現代だからこそ、子どもには確かな教育を受けさせ、世界で活躍できる人に育ってほしい。そう願う親たちから、モンテッソーリ教育は熱い支持を集めています。本記事では、中内玲子氏の著書『シリコンバレー式 世界一の子育て』(フローラル出版)より一部を抜粋・再編集し、モンテッソーリ教育について解説していきます。
140ヵ国以上で採用された「教えない」教育法…実施園に通う子どもたちの「驚愕の光景」

実施園(施設)ではどのような教育が行われているのか?

子どもは「自己教育力」によって自分の力を発達させますが、その発達の仕方はおおまかな段階に分かれており、それを「敏感期」と呼びます。「敏感期」はもともと生物学の用語で、「あることに対する感受性が強くなる時期」のことを指します。敏感期は0〜6歳の幼児期に集中しており、具体的には、「言語の敏感期」「秩序の敏感期」「運動の敏感期」「感覚の敏感期」「数の敏感期」「文化の敏感期」があります。

 

子どもは、適切な敏感期に自分自身を発達させるための課題である「おしごと」に取り組みます。たとえば、コップの水を別のコップに移し替える「あけ移し」は、運動の敏感期に子どもが取り組む「おしごと」の一例です。同じように、ティッシュペーパーを箱から引き出すなど、大人からしたら「困ったいたずら」と思えるようなことも、子どもが自分の「運動の敏感期」に合った活動をしていることのあらわれだとモンテッソーリ教育では考えます。

 

モンテッソーリ教育を取り入れた施設では、「敏感期」ごとにコーナーを設けます。たとえば、0〜3歳は「粗大運動」「微細運動」「日常生活」「言語」「感覚」「音楽」「美術」の7つ、3〜6歳は「日常生活」「感覚」「言語」「算数」「文化」の5つの環境が用意されます。

 

教育者は、それぞれのコーナーに「おしごと」をするための「教具」を配置して、子どもが自分の敏感期に合った活動に自由に取り組める環境を用意します。敏感期に適した「おしごと」に取り組むと「集中現象」が起こり、子どもはその課題に没頭するようになります。マリア・モンテッソーリはその状態を「環境に恋をする」と表現しています。敏感期に合った活動に集中して取り組むと、いずれ子どもは満足します。「あんなにティッシュペーパーを何枚も引き出して大変だったのに、いつの間にかしなくなった」という場合は、子どもが敏感期に必要な活動を十分にしたからだと考えられます。

 

マリア・モンテッソーリは、大人は「子どもが一人でできるように手伝う」ことが大切であり、「不必要な援助は発達の障害物になる」としています。

 

そのため、モンテッソーリ教育の施設では、子どもが自ら「おしごと」を見つけて集中している間は、教育者は手や口を出さずに見守ります。子どもが必要とするときだけ、教育者がさりげなく提示をしたり、お手本を見せたり、ヒントを出して、そのときに適切な環境に子どもを結びつけます。

 

モンテッソーリ教育を取り入れた保育園や幼稚園は、日本にもたくさんありますし、モンテッソーリ教育を紹介する本も数多く出版されています。また、インターネットで調べると、家庭でできる「おうちモンテ」のアイデアがたくさん見つかります。本格的なモンテッソーリ教育の教具とは異なる部分もありますが、興味を持った方はそういったものから試してみるのもよいと思います。

 

 

中内 玲子

日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool

創立者