幼児期に育てるべき力とは?
なぜ小学校に上がる前に先取り学習をするよりも、遊びや能動的な活動をしたほうがよいのでしょうか。それは、「この時期にこそ身につけたい力」があるからです。その力とは、主体性や探究心、「非認知能力」と呼ばれる自尊心や忍耐力、社会的スキル、他者への思いやりなどです。なかでも、社会的スキルは、何で遊ぶかお友だちと相談したり、おもちゃの取り合いでケンカをしたりしながら育まれるもので、与えられたタスクを達成するだけの学習では育てられない力です。
筆者が創立したそら幼稚園でも、遊びの時間をバランスよく取り入れるため、「フリーワークタイム」という子どもが自分の意思で活動に取り組む時間を設けています。
教室内をエリア分けして、それぞれのエリアにワークを設定しています。ごっこ遊びをするソーシャルエリア、ブロック遊びをするクリエイティブエリア、モンテッソーリ教育の教具で指先の筋肉や集中力を鍛えるエリア、お絵かきなどをするアートのエリア、数字や文字をさまざまな形で学ぶラーニングエリア、日本語と英語の本を自由に読めるライブラリー、少しお休みしたい子がほっとしてくつろげるソファなど、「フリーワークタイム」は子どもたちが自分で取り組みたいエリアを選んでワークをします。
「将来のために、今は遊びを我慢させる」という方もいますが、それはかえって子どもの将来のためにならないのです。
小学校入学前と後では子どもを取り巻く環境は大きく変わります。小学校に入ると、学習する教科が増え、習い事に通う子も多くなり、幼児期に比べて自由に遊べる時間が少なくなります。主体性を育て、好奇心や探究心の基礎を育み、社会的スキルを身につけるのにベストな時期は小学校入学前までなのです。ですから、先取り学習に熱心な親御さんを目にするたびに、私は「今、必要なことをやらせてあげなくて、いったいいつやるの?」と歯がゆい思いをしています。
中内 玲子
日英バイリンガル幼稚園Sora International Preschool
創立者