母の看病のために仕事を辞めた父…3年の看病生活
山崎直樹さん(仮名・35歳)。62歳になる母を乳がんで亡くしました。大学進学時に家を出て20年あまり。実家に帰るのは盆と正月の2回ほど。いまさらながら、もっと頻繁に帰って親孝行をしたらよかった、そんな後悔の念が広がったといいます。それは山本さんの弟や妹も同様だったようです。
株式会社AlbaLinkによるアンケート調査によると、実家に帰る頻度で最も多かったのが「年2回」で18.6%。続いて「年1回」が18.2%。これは自宅と実家が遠距離の場合でしょうか。「月1回」 「2~3ヵ月に1回」がともに15.8%、 「月1回超」が13.8%。これらは自宅と実家が近距離の場合でしょう。
遠方に住んでいたら、年1~2回というのは決して少なくありませんが、家族の死を前にしたときには後悔になってしまうようです。
そんな後悔とともに山本さんが気になったのは、実家で暮らす父親(65歳)のこと。母親が乳がんに罹患した3年前に仕事を辞め、看病に専念してきました。仕事を辞めるとき、「65歳になったら、夫婦で年金は35万円ほどもらえる。何も心配ないさ」」と父親。夫婦水入らずの老後の生活を夢見ていましたが、それは叶うことはなかったのです。母親の看病に全力投球してきただけに、糸が切れてしまわないか……非常に心配だったといいます。
――一緒に住まない?
同居について言い出したのは、山本さんの妻。ずっとでなくても、落ち着くまで一緒に住むのはどうか、といってくれたといいます。そんな申し出に対し、父親は感謝を述べつつ拒否。子どもたちの家族に迷惑をかけるほうが負担だというのが、拒否の理由でした。
それから半年後、母が亡くなり初盆となるタイミングで帰省をした山本さん。弟家族や妹家族も勢ぞろいと、久々に賑やかな帰省になるはずでした。しかし山本さんが見たのは、あまりに衝撃的な光景でした。
チャイムを鳴らしても父親は出てくることはなく、預かっていた合鍵で家に入ると、モノの腐ったような臭いが鼻につきます。異変を感じ、山本さんだけが家のなかへ。ずっと掃除してなかったことは明らかなほど荒れ放題。キッチン・ダイニングには、いくつものゴミ袋が山積みになっています。そしてリビングの扉を開けると、山本さんの父親がぼんやりとテレビを観ていました。「あぁー、今日だったか、お前たちが帰ってくるの……」と弱々しい声でいう父親。目には生気がありませんでした。
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