サービス業をしていると、時に理不尽なクレームを受けることもあるでしょう。感情が先立つと後になって後悔するかもしれません。本記事では、元ANAのCAで人材教育講師の三上ナナエ氏の著書『一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)より、クレーム対応におけるサービスの姿勢について解説します。
おまえ、この植木鉢壊しただろ!…いわれないクレームをつけられた無実の庭師「やった・やらない」の押し問答に。後日、後悔した悲しい理由【マナー講師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

行動の裏にある気持ちを汲み取る

お客様の応対で大切なことの一つに、「お客様の気持ちを察すること」があります。お客様がなぜ今そういう言動や態度をとるのか、気持ちをわかってさしあげる。

 

サービスという言葉の意味には、形あるものや経済的に価値あるもののやりとりという意味の他に「奉仕する」という意味があります。奉仕とは相手を大事にする気持ちが元になって、言葉にあらわしたり、行動するということです。お客様の気持ちを理解しようとするプロセス、そしてそれがお客様にも伝わることが、その場の満足度を大きく左右するのかもしれません。

 

その際に、大切なことは何でしょうか? 先述の知人の例でみると、「植木鉢を壊した」と言われたことに対して、壊していない知人が「私は壊していない」と言い返す。内容に関して言えば正しいわけです。壊していないものは壊していない。しかし、ここでは主張の正しさを証明することが大切なのでしょうか? 

 

まさにこういう場面でこそ、内容の正しさよりも相手の心情をること、お気持ちを察して、わかってさしあげること。そして、そこからコミュニケーションをしていくことが大切なのです。

 

例えば、「大事な植木鉢だったんですね」とお伝えしてもよかったかもしれません。人は、ずっと一つの感情にはとどまりません。怒りの感情も次第に変容していきます。「自分のことをわかってくれている」または「わかろうとしてくれている」という態度や言動に触れることで、怒りは静まり、逆に今まで以上に信頼されたり、より心を開いてくれるものなんですね。

 

正しいか正しくないかではなく、お客様の気持ちをわかってさしあげること。この視点、感覚を大切にもってほしいなと思います。

 

POINT:どんなクレームにも必ず理由がある

 

 

三上 ナナエ

元CA・人材教育講師