サービス業をしていると、時に理不尽なクレームを受けることもあるでしょう。感情が先立つと後になって後悔するかもしれません。本記事では、元ANAのCAで人材教育講師の三上ナナエ氏の著書『一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)より、クレーム対応におけるサービスの姿勢について解説します。
おまえ、この植木鉢壊しただろ!…いわれないクレームをつけられた無実の庭師「やった・やらない」の押し問答に。後日、後悔した悲しい理由【マナー講師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

お客様の「言葉の裏」にあるものを読み取る

いわれのない文句をつけられたら

時に理不尽なクレームを受けることがあるでしょう。そんな時に知っておいていただきたいことがあります。一つのエピソードとともに、ご紹介します。

 

私の知人に、お宅に訪問して庭のお手入れをするサービスをしている人がいます。ある日、一人暮らしの男性のお客様のお宅で庭を手入れしていた時のことです。突然、「おまえ、この植木鉢壊しただろ!」と家主である男性が、烈火のごとく怒り出しました。しかし、その知人は壊した覚えはありません。ですので「いえ、壊してないです。最初から壊れていました」と伝えました。それでも、「嘘をつくな、お前がやったんだろ!」と詰め寄られます。

 

男性のあまりの剣幕に、思わず「だから、やっていませんよ!!」と強い口調で言い返してしまったそうです。その後も、「やった・やらない」の押し問答が続き、結局そのまま納得してもらえず、うやむやな状態で帰ることになりました。

 

やりもしない罪を着せられ、怒鳴り散らされ、「なんて嫌な日だったんだ!」とその日は家に帰っても気持ちがおさまらず、家族にも愚痴をこぼしたそうです。しかし時間の経過とともに、冷静になると、ふとこんなふうに思ったそうです。

 

「あんなに急に怒り出すなんて、ひょっとしてあの植木鉢には、私にはわからない思い入れがあったのかな……。確かに私は壊してないけれど、強い口調で言い返すのはよくなかった。まず気持ちをわかってあげるような言葉をかけていれば、違っていたかもしれない」そのお客様は、毎年庭の手入れを頼んでくれていた方でした。なので、もしまた来年も依頼があれば希望して行かせてもらおう、そしてその時に「感情的に言い返してすみませんでした」と、今回のことをお詫びしようと思っていました。しかし、お客様は亡くなられ、結局お詫びはできずじまいになってしまったそうです。