厚生労働省の人口動態統計によると、高齢化に伴い、夫を亡くした妻の数は年々増加傾向にあります。特に65歳以上の高齢者で増えていますが、なかには、若くして夫を亡くすケースも。そこで難しいのが亡夫の親との関係。夫というクッションがなくなったとき、本当の関係が露呈することもあるようです。
月収45万円・43歳の息子が突然死…〈仕送り月10万円〉に頼っていた〈年金月5万円〉の70歳母、困窮。義娘に助けを求めるも「もう他人なんで」と断られ、「どう生きていけばいいのか」とすすり泣き ※写真はイメージです/PIXTA

息子の死後、義娘にお金の無心にやってくる義母を一蹴

そんな不満を募らせているなか、宏美さんの夫は急性硬膜下血腫で帰らぬ人に。突然のことでパニックになったという宏美さん。幸い、団信でローン返済は免除。生命保険にも加入していたので、当面の生活費は困らず、落ち着いて正社員の仕事を探すことができました。残された母と2人の子の生活は(経済的には)困ることはないといいます。

 

ただ問題は義母。夫が亡くなったあと、しばらく経ってからお金の無心をしてくるようになったといいます。「生命保険金が入ったことなど、どこからか聞いたんでしょうね」と宏美さん。ただもともと嫁姑関係はよいとはいえず、亡くなった夫には悪いとは思いつつも、母子の生活で精いっぱい。義母を支える筋合いなどありません。

 

しつこくお金を無心してくる義母に対して「もう、他人なんで」と一蹴。「どう生きていけばいいのか……」とすすり泣く義母。ただウソ泣きであることはバレバレで、宏美さんは無視を決め込んだといいます。

 

民法では直系血族と兄弟姉妹は当然に扶養義務を負うと定めています。また配偶者にも扶養義務があることを定めています。

 

▼民法877条

① 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

② 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

③ 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる

 

▼民法752条

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 

つまり、自分の両親には民法上扶養義務があり、義父母には扶養義務はないことになります。宏美さんが義母を無視したところで、法律上は何の問題もないということになります。

 

また夫が亡くなったあと、夫の一族とは関わりさえ持ちたくないというケースもあるでしょう。その場合は、死後離婚という選択肢もあります。夫と結婚したことで、夫の血族とは姻族という戸籍上の家族の関係になります。それを終了させるための手続きが「姻族関係終了届」といい、俗にいう死後離婚の手続きになります。

 

手続きはいたって簡単。本人の意思だけで提出できます。ただ姻族関係終了届は一度提出すると取り消すことはできません。本当に最良の選択なのか、よく検討することが重要です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』

e-Gov 法令検索『民法』