よく耳にする「遺族年金は亡くなった人の年金の4分の3」の真意
家族が亡くなったとき、残された家族への保障はそれぞれですが、より多くの人を対象とした公的な保障が遺族年金。老齢年金に由来する遺族年金は、国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金の2種類があります。
遺族基礎年金は子育て世代を対象としたもので、子に関する受給要件があります。一方、遺族厚生年金には子の要件はなく、子育てを終えた年金世代の人たちも受け取ることができます。
遺族年金を受け取るには自分で手続きをしなければなりません。その期限は、「生計維持関係にある人が亡くなった翌日から5年」。年金を受け取る権利である基本権の時効は5年であり、5年以内に手続きを行えば、未支給分含めさかのぼって受け取ることができます。
請求書の提出先は最寄りの年金事務所、または年金相談センターへ。
そこでちょっとしたひと悶着があったと、伊藤さんは振り返ります。それは手続きのために年金事務所を訪れていたときのこと。自身がどれほどの遺族年金を受け取れるのか、確認したところ、「月に5万円弱になりますね」との回答。そこで伊藤さん、「思っていたよりもずいぶんと少ない。計算、間違えていませんか?」と聞き返したといいます。
――遺族年金は亡くなった人の年金の4分の3と聞きました。夫は月20万円くらいもらっていたので、月15万円になるはずです。もう1回計算してください
確かに、遺族年金は亡くなった人の年金の4分の3とよく目にします。しかし、その説明、少々文言が省かれていて誤解を招く原因に。正しくは「①遺族厚生年金は亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」。また自身も老齢厚生年金を受け取っていれば、「②亡くなった人の老齢厚生年金の2分の1と、自身の老齢厚生年の2分の1」と比較して、高いほうが受給額。さらに自身の老齢厚生年金分は全額支給で、その分は支給停止となります。
恵子さんがもらっている年金は月12万円。ざっと計算していくと、当初考えていた金額の3分の1という結果に。
①(20万円-6.8万円*)×3/4=9.9
②(20万円-6.8万円)×1/2+(12万円-6.8万円*)×1/2=9.2
*令和6年度 老齢基礎年金満額受給の場合の金額
①>②なので、遺族厚生年金の受給額は9.9万円。ただし恵子さんの老齢厚生年金5.2万円は全額支給となり、その分、遺族厚生年金は支給停止。受け取れる遺族厚生年金は4.7万円となる
――そういうルールなんです。ご理解ください
応対してくれた年金事務所の担当者の冷静な対応。恵子さんは、ただ遺族年金の仕組みを知らない人でしかないという顛末。しっかりと老後について話し合っていれば、「遺族年金は亡くなった人の年金の4分の3」という勘違いもしなかったのに……思い出すと、恥ずかしくて顔から火が出そうだといいます。
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[参考資料]
株式会社LIFULL senior『パートナーとの老後生活に向けた意識調査』