長寿化が進むなか、定年後も働くというのがトレンド。しかし本音は「会社のしがらみから解放されたい」という人が多いようです。それでも働き続けるのは、単純にお金の問題。つまり定年、さらには定年前に仕事を辞められるのは、ひと握りのエリートだけということ。しかし早々に会社を辞めたからといって、必ずしもバラ色のセカンドライフが待っているかといえば、そうでもないようです。
〈退職金3,000万円〉〈最高月収100万円〉〈貯蓄5,000万円〉60歳の元エリートサラリーマン、余裕の老後のはずが「まさかの夜逃げ」。自宅ドアの向こうに広がっていた衝撃光景 写真はイメージです/PIXTA

定年5年前に会社を去ったエリートサラリーマン…退職の本当の理由

定年を待たずに会社を辞めてしまった憧れの人、高橋さん。どんなセカンドライフを送っているかは、これまたいろいろな噂話。

 

――会社を立ち上げて、すごい儲かっているらしい

――軽井沢に別荘を買って、二拠点生活を送っているらしい

――いや、海外移住したらしい

 

どれも本当のように思えるものでしたが、プライベートでの繋がりのあまりなかった高橋さん。本当のことを知っている人は少ないようです。ただどれも憧れのセカンドライフ。鈴木さんの高橋さんへの憧れは強くなるばかりだったといいます。

 

そんななか、まったく違う噂も。

 

――高橋さんは親の介護のため会社を辞めた。今も付きっきりで介護をしている

 

180度違う話でしたが、どうも信憑性の高い話として、広がっていったといいます。その後、話は急展開。

 

――高橋さんが介護しているお母さんを置いて逃げ出したらしい

 

話を整理すると、介護を必要していた80代の高橋さんのお母さん。脳梗塞の後遺症から寝たきりで、さらに認知症の症状も進行。昼夜逆転が激しくなり、高橋さん自身、まともな生活ができなくなっていたといいます。

 

そしてある朝、自宅を訪ねてきたケアマネージャーが目撃したのは、まるで夜逃げをしたかのような部屋の惨状。昨日まであった家財道具のなかには、なくなっているものもあったそうです。そしてベッドの上には、どうすることもできずに横たわっている高橋さんの母親。いつも母親の横にいる高橋さんの姿は見当たらず、携帯電話に連絡しても不通が続いたとか。後日、何とか連絡が通じ、高橋さんは自宅に戻ることに。しかし心労がひどく、入院することになったといいます。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』で、要介護度別にみた「同居の主な介護者」の介護時間の構成割合をみていくと、ほとんど付きっきりで介護をしている割合は、要介護3で3割、要介護4で4割、そして要介護5になると6割を超えます。

 

▼要介護3

ほとんど終日…31.9%、半日程度…21.9%、2~3時間…11.5%

▼要介護4

ほとんど終日…41.2、半日程度…20.0%、2~3時間…9.4%

▼要介護5

ほとんど終日…63.1%、半日程度…17.2%、2~3時間…9.1%

 

高橋さんのように、介護に熱心な人ほど、ある日、限界を超えてしまい、介護破綻に陥ってしまうケースがあります。介護に頑張りすぎてしまう人、さらにまわりに助けを求めることができない、孤立してしまった人がなりやすいといいます。高橋さんの場合、普段からお世話になっているケアマネージャーがいたといいますが、心のうちまでは相談できなかったよう。もう少し社会とつながりを持ったり、助けを求めたりすることができたなら、このようなことは起きなかったかもしれません。

 

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[参考資料]

Job総研『2024年 定年に関する意識調査』

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』