いつかは誰もが直面するだろう親の死。それに伴い必ず相続が発生します。相続ではお金はもちろん、いろいろな感情が絡み合い、トラブルに発展することも珍しくはありません。よくあるケースのひとつが「遺産の使い込み」。意図的で使い込んでいるケースもあれば、意識せずに使い込みが行われているケースも。どちらにせよ、仲のいい家族でも一気に険悪になるきっかけになるものです。
白状しなさい!享年90歳の母が残した「2冊の預金通帳」だったが…「400万円の不明な引き出し」が発覚。次女に向けられた疑惑の目 (※写真はイメージです/PIXTA)

終活で見つけたラジカセ。声で遺志を残す

株式会社NEXERとSAIKAI&COによる調査によると、「自分(配偶者)の親に行ってほしい(行ってほしかった)終活はありますか?」の問いに対して、「ある」が32.7%。具体的な内容として最も多かったのが「不用品の処分」で28.1%。27.2%と僅差で「資産管理」と続きました。

 

【不用品処分回答理由】

・自分で捨てるには思い出があって捨てにくいから。(20代・女性)

・家が物で溢れているので元気なうちに少しずつ整理していってほしいです。(40代・男性)

・不用品の処分に金がかかる。(40代・男性)

【資産管理回答理由】

・まったく知らないのでいざとなったときに困るから。(30代・男性)

・おカネのことは兄弟含めて死んだ本人だけの問題ではないから。(30代・女性)

・財産分与とかキチンとしとかないとトラブルになるから。(30代・男性)

 

では実際に終活を行っているかどうかというと、その割合は16.4%。具体的に行っていることとしては、圧倒的に多いのが「不用品の処分」で78.7%。「資産管理」40.2%、「電子機器のパスワード管理」33.5%、「保険の見直し」28.7%と続きます。

 

福田和子さん(仮名・当時80歳)は、長女の恵子さん(仮名・当時58歳)、次女の久美子さん(仮名・当時56歳)、三女の由美子さん(仮名・当時53歳)の子どもたちの手を借り、終活を進めています。

 

「もう少し早く始めていれば、もっと楽だったのに……」と和子さん。夫が亡くなったのは3年前のこと。そのとき色々と整理すればよかったのですが、いざ不用品を処分しようとすると、あれもこれももったいと感じ、終活を断念。今日に至るといった状況です。

 

しかし80歳を迎え、いつ、何があるかわからないと考え、終活を再開することに。ただ自分ひとりで進めようにも、きっと進まないだろうからと、娘たちの力を借りることにしたといいます。

 

実家から一番近くに住む次女は、週に1度くらいのタイミングで遊びに来ては、少しずつ不用品を処分していきます。車で1~2時間ほどかかる長女と三女は、実家に来られるのは2、3ヵ月に一度くらい。実家に行くタイミングを3人で合わせて、そのときは一気に不用品を処分する……そのような形で終活を進めていったといいます。

 

そんなとき、次女が発見したのが古いラジカセとカセットテープ。再生しようとしたら……きちんと聞くことができました。そこに入っていたのは、3人の娘たちが未来の自分に向けてのメッセージ。「やだぁー」とかいいながら、幼かった日々のことを振り返ります。おかげで終活は一時中断。テープに聞き入っていると、ふと三女が「名案!」と立ち上がります。

 

――せっかくだからお母さんの声を録っておこう

 

不用品の処分が終わったら、遺言書やエンディングノートをつくろうと考えていましたが、それを声で残してみたら、というのです。「面白そう」と長女と次女も大盛り上がり。娘たちにいわれるがままに、葬儀のことや遺産のことなどを録っていきます。「娘一人ひとりへのメッセージは、恥ずかしいから一人でいるときに録るから、と約束しました」と和子さん。声で遺志を残し、終活は無事に終了。それから和子さんがこの世を去ったのは、10年ほど経ってからのことでした。