なぜシングルマザーになったのか……実に8割は離婚がきっかけです。しかもその半数はさまざまな諸事情により養育費の取り決めをしていません。それが母子世帯の貧困の最大の要因となっています。
絶対に忘れません…〈月収10万円〉〈養育費ゼロ円〉33歳のシングルマザー「もう限界…」と生活保護申請も、悔しくて唇を噛むしかなかった「市役所でのひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

もう生きていけない…支援を求めた役所でまさかの怒号

前出のひとり親世帯の調査結果に戻ると、母子世帯のうち、母親の就業率は86.3%。正社員で働いているのは48.8%で、パート・アルバイト等が38.8%。平均年間就労収入は236万円。単純計算、月19.6万円といったところ。この金額を得ようとするには、パートだとなかなか難しいでしょう。伊藤さんのように生活保護による支援も視野に入ってきます。

厚生労働省『被保護者調査(令和6年8月分概数)』によると、生活保護世帯は165万2,380世帯。そのうち母子世帯は6万2,436世帯。ひとり親世帯調査によると、母子世帯は全国で119.5 万世帯というので、母子世帯のうち、20世帯に1世帯は生活保護を受けているといえます。

 

結果からいえば伊藤さんも無事、生活保護を受けることができたといいます。しかし、そのときの屈辱を忘れないとか。

 

――役所の担当者に「若いんだからもっと働けるでしょ。生活保護は市民の税金。生活保護はその上であぐらをかくようなもんなんだからさ」と怒鳴られて。周囲に多くの人がいるなかですよ……信じられます?

 

生活保護の財源が税金であることも重々承知のうえでの助けを求めたのにも関わらず、そんないわれ方に大いに傷ついたといいます。

 

――あとで聞いたところによると、その職員の対応が問題になって、異動させられてみたいですけど。役所によっても対応は全然違うって聞きますが、本当に悔しかったですね

そう振り返る伊藤さん。そのときは「親子、生きていくため」とぐっと唇を噛みながら我慢して生活保護を申請し、無事、承認を受けたといいます。しかし「早く生活保護の生活から抜けだしてやる!」と決意したそう。次男が小学生に上がるころには情緒も安定してきたため、正社員として働きだし、収入は月25万円を超えるように。無事、生活保護の生活からは脱出することができたといいます。

 

――今思い出しても、大勢の前で罵られたことは忘れません。でもあの屈辱があったからこそ、いまがあると思っています

 

[参考資料]

厚生労働省『令和3年度 全国ひとり親世帯等調査』

厚生労働省『被保護者調査(令和6年8月分概数)』