40代の頃に聞いた遺族年金の目安額だったが…
60歳で定年退職した加藤さんの夫は、同じく加藤さんの定年退職を楽しみにしていたといいます。
――私が勤めている会社は65歳が定年だったので、年金をもらい始めるつい最近まで働いていました。夫は「君が仕事を辞めたら、パーッとどこかに旅行でも行こう!」とはしゃいでいたのに……
夫、そして夫婦の夢を叶えることができず、葬儀では喪主の挨拶もできないほど憔悴しきっていたという加藤さん。葬儀から1ヵ月ほどが経ち、ようやく落ち着きを取り戻してきたといいます。葬儀が終わったあとの公的手続きとしては以下の通り。ちなみにマイナンバーが収録されている場合は、年金受給停止は手続き不要。ただし未支給年金の届け出は必要です。
■2週間以内
・年金受給停止
・健康保険の資格喪失届
・介護保険資格喪失届
・住民票の世帯主変更届
■1ヵ月以内
・雇用保険受給資格者証の返還…1カ月以内
■2年以内
・国民年金の死亡一時金請求
・埋葬料請求
・葬祭費
・高額医療費の還付申請
■5年以内
・遺族年金の請求
・故人の未支給年金の請求
「色々と手続きをしていかないと……」と、動き出した加藤さん。そのなかで、思いもしない出来事に思わず涙したことがあったといいます。それは年金まわりの手続きを一気に済ませようと思い、年金事務所を訪れたときのひとコマ。手続きのひとつに遺族年金の請求がありました。
加藤さんの夫が受け取っていたのは、月17万円の基礎年金と厚生年金。20年以上前、加藤さんが40代だったころに、近所に住む知り合いの旦那さんが亡くなったことがありました。そのとき、知り合いが「遺族年金は厚生年金の4分の3ほど」といっていたのを覚えていました。そこで「月に7万6,000円くらいかな」と皮算用していたといいます。
加藤さん自身が受け取っている年金は16.5万円程度。合わせて月24.6万円ほどになると考えていました。しかし年金事務所でいわれたのは「遺族年金は月2,500円ほどになります」という衝撃的な事実。思わず、「えっ、何かの間違いでは? もう一回ちゃんと計算してください」といってしまったといいます。
遺族厚生年金の受給額は、亡くなった人の厚生年金の4分の3。そして65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利のある人の場合、遺族年金を受け取る人が65歳以上の場合、「①亡くなった人の厚生年金の4分の3」と「②亡くなった人の厚生年金の2分の1+自身の厚生年金の2分の1」の多い金額が採用されます。この場合は、①7.6万円 ②9.95万円となり、9万9,500円となります。
つまり、加藤さんが考えていたよりも遺族厚生年金額は多かったということになります。しかし、さらに続きがあります。
平成19年(2007年)4月1日からは、自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある人は、老齢厚生年金は全額支給、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給停止になるというルールに変更されました。
つまり、20年以上前の記憶で皮算用をしていた加藤さんは、とんだ勘違いをしていたことになります。月7万6,000円だと思ったいた遺族年金は30分の1の金額にまで減ってしまったわけです。年金事務所から解説を受け、納得するしかない加藤さん。
――遺族年金なんて、もらえるとしてもずっと先のことと思って……わたしだけ、時間が止まっていました
今後も、年金のルールは変更になる可能性があります。生活設計に大きく影響を与えるものなので、最新情報をしっかりと掴んでいきたいものです。
[参考資料]