ひとり暮らしの高齢者。1ヵ月の平均支出は14万円ほどだといいます。年金と貯金の取り崩しで対応となりますが、貯金がなければ、当然「働く」という選択に。しかし年を重ねるごとに体を動かすのが大変となり、いずれ働けなくなるでしょう。行き詰った高齢者の行く末は?
もう働けねぇ…〈年金月4万円〉〈家賃4,200円の市営団地〉に住む77歳男性、腰が限界で「時給1,580円工場バイト」を解雇。助けを求めた市役所の担当者に涙した理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

手取りで月16万円の収入があったが…無収入に転落で窮地

元自営業という佐々木さん。仕事が順調にいっていたときもありましたが、不況のなか思うようにまわらなくなり60歳前に廃業。以来、市内の工場などの日雇いバイトで食いつないできたといいます。

 

――会社勤めなんてイヤだと自営でやってきたけど……それが失敗だったのかな

 

直近の工場バイトの時給は1,580円。1日6時間、週5日勤務。月20万円強、手取りにすると月16万円。

 

――ちょっとでも節約して貯金でもしていたら、違ったかなぁ

――仕事終わりに缶ビール1本。これをやめておけば、随分、お金が貯まったかもしれないな

 

仕事を辞めれば、貯金はほぼゼロで、収入は月4万円強。とても生きていけません。年齢とともに無理がきかなくなっていくことに不安を感じながらも、考えないようにしていたといいます。しかし、遂にそのときが来ました。

 

――もう、腰が限界で働けねぇっとなって……もちろん仕事はクビ。もう生きていくのもシンドイと思ったね

 

生活に行き詰まっているときに、助けてくれたのが地域の民生委員。市営団地の申し込みや、生活保護の申請の手伝いなどをサポートしてくれたといいます。

 

実は以前、生活保護を断られたという佐々木さん。そのときは、働けることを理由に申請却下となったといいます。そのため「絶対に役所になんか世話にはならねぇ」と意固地になっていたといいますが、今回は「大丈夫ですよ。今まで頑張られましたね」と声をかけられたとか。

 

――以前とは違う担当者だったからというのもあるけど……いやぁ、あんときは涙が止まらなかったね

――世の中、捨てたもんじゃないな

 

佐々木さんの住む地域では、最低生活費となる生活扶助基準額は75歳以上で6万8,820円、家賃となる住宅扶助基準額は4万1,000円(実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃の額が支給される)。最大10万9,820円の生活保護費がもらえる可能性があります。佐々木さんの場合、生活扶助基準額から年金月額を引いた月2.8万円ほどと、市営団地の家賃分4,200円を合わせた金額、月3万円強を受け取ることができます。

 

厚生労働省『生活保護の被保護者調査(令和6年8月分概数)』によると、201万0,289人が生活保護を受けています。国民の60人に1人という水準です。そのうち55.2%にあたる90万7,513世帯が高齢者世帯で、84万3,925世帯が単身者。つまり、おひとり様の高齢者ほど「低年金、しかも貯蓄なし」という状況に陥りやすいといえます。

 

昨今、結婚に対する価値観も大きく変わり、生涯未婚率は右肩上がり。それを受けて今後ますます困窮する高齢者は増えていくといわれています。このような状況に直面しないためにも、現役世代の私たちは、早め早めに資産形成をスタートさせる……それ以外の道はありません。

 

[参考資料]

総務省『家計調査(家計収支編)2023年(令和5年)平均』

厚生労働省『生活保護の被保護者調査(令和6年8月分概数)』