夫婦2人で受け取る年金は、夫と妻のそれぞれの老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせてもらえるため、ある程度の金額になります。しかし、どちらかが先立った場合には、亡くなったほうの老齢基礎年金は受給できなくなり、老齢厚生年金は老齢遺族年金として受け取れますが、金額は少なくなってしまいます。本記事では、杉本さん(仮名)の事例とともに、老後の年金について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
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複雑な年金制度

老齢年金は、夫婦2人のときには、それぞれの年金が受け取れるので、多くなりますが、厚生年金の加入期間や金額が多い夫が先立たれた場合、これまでの2人合わせた年金から、少なくなります。

 

今回は、母親も会社員勤めが長かったことで、自分自身の年金も多かったのですが、これまで扶養控除内で働いていた人などは、自分自身の年金が老齢基礎年金と僅かな老齢厚生年金になります。仮に配偶者の夫が先立ってしまうと遺族厚生年金が受け取れるとしても、夫がもらっていた額の4分の3になってしまいます。

 

社会保険の加入要件も厳しくなり、多くの企業が新たなルールに適応する必要に迫られています。2024年10月からは、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が広がったのです。それまでの従業員101人以上の企業というルールから、「従業員51人以上の企業」で働く人に適用範囲が拡大され、一定の収入があることや、就労時間があることにより、社会保険に自分自身で加入しなくてはならなくなりました。しかし加入者からすると、社会保険に加入しておくことにより、夫婦2人のケースで年金を受け取るようになると、収入が増えることになります。つまり、長寿化を考え、年金を受け取りながら貯蓄を増やすこともできるのではないでしょうか。

 

年金制度に不信感を抱く人が多くいますが、仕組みについて、しっかりと理解しておくことが大切です。
 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表