年金額減少でも支出が多くなる
父親が他界して、母親は1人部屋に移ることになったのですが、月額利用料は半額になるわけではなく、23万円に。入居時に父親と母親の貯蓄から入居金1,000万円を払っていたので、家を売却したお金とわずかな貯蓄になっていたのです。
母親は遺族年金が受け取れますが、父親が受け取っていた老齢厚生年金の4分の3が遺族年金として受け取れることになります。ただ、全額が受け取れるのではなく、自分が受け取っている老齢厚生年金分を引いた差額を受け取ることになります。杉本さんの母親の場合は、老齢厚生年金が6万2,000円、遺族厚生年金が7万6,500円で差額の1万4,500円を受け取り、老齢基礎年金と合わせると14万4,500円となります。
これまで貯蓄から6万円を取り崩して、月額利用料に充てていましたが、1人部屋になって逆に支払いが3万円増えてしまいました。このころ、母親も体調が悪くなることが多く、医療費も増えて、支出が思っていた以上に増えていきます。心配性の母親は、支出が増えていることで「ホームを退去させられるかもしれない。このままでは路頭に迷ってしまう」と、杉本さんに連絡をし、いまの母親の状況をようやく理解しました。
子どもたちが独立したあとは母を支援
現在、大学に通う2人の子どもも、あと4年すれば大学を卒業します。遺産相続の際に受け取った相続分は、アパートに住んで通学する子どもたちの学費などで使ってしまい、すぐに母親の面倒を見る余裕がありませんでしたが、まだ母親には貯蓄もあり、数年のあいだはいままでどおりの生活はできる様子です。そのため、子どもが卒業後は、母親に仕送りをすることを考えてもらいました。
また、これまでは、国民健康保険料を母親が自分で払っていたようですが、杉本さんの扶養に入ってもらうことで、母親の負担が減らせることもアドバイスをしました。その後は、心配性の母親に杉本さん本人が、今回のアドバイスを説明し、安心してもらうことができました。子どもに頼るのは最終手段かもしれません。しかし、母を路頭に迷わせるくらいならと、杉本さんもそれしかないと、決断に踏み切りました。