肉体的にも精神的にも追い詰められる在宅介護の現場
介護ヘルパーが来ないという緊急事態に見舞われた斉藤さん。
――今でさえ限界を感じているのに、ヘルパーさんが来られないとなると……母とどう生きていけばいいのか
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、在宅介護を受ける要介護者の9割弱が介護サービスを利用。その平均介護サービス費用は3万6,814円。斉藤さんの母親同様、要介護3に絞ると、92%が介護サービスを利用し、その平均額は4万6,369円です。
【介護度別「平均介護サービス費用」】
要介護1…2万0,755円
要介護2…2万7,860円
要介護3…4万6,369円
要介護4…5万6,748円
要介護5…7万5,466円
同居する子どもが主な介護者であるとき、仕事をしているのは58.3%。要介護3では50.8%と、ちょうど半数の人が仕事と介護を両立させています。
斉藤さんのように「介護される親と介護をする子」という家庭の場合、子どもが行っている介護内容で多いのが「買い物」「洗濯」「掃除」。事業者にやってもらうことが多い介護は「入浴介助」「洗髪」「身体の清拭」。双方で行っているのが「食事の準備・後始末」「話し相手」「着替え」となっています(図表)。
――基本的に介護ヘルパーの来ない休みの日は、ずっと母親の介護をしていて、休む時間がない
と斉藤さん。肉体的な負担は、体調の不良となって出てきます。実際に何かしら自覚する症状が出ているのは、介護者の44.7%。具体的な症状として最も多いのが「腰痛」で全体の9.0%。「手足の関節痛」「肩こり」「手足のしびれ」「不眠」と続きます。
さらに精神的な負担も相当なもの。介護者の69.2%が「悩みやストレスあり」と回答。その原因としては79.6%が「家族の病気や介護」。27.2%が「自分の病気や介護」、22.4%が「収入・家計・借金等」と続きます。
最近、母親の認知症が進み、娘である斉藤さんが誰なのかわからなくなることもしばしば。「近寄るな」「あっちいけ」「ドロボウ!」などと暴言を浴びせられたかと思ったら、「陽子~、陽子~」と甘えてきたり……そんな母親に翻弄され、疲労困憊だといいます。
――人の手を借りながらの介護でも手いっぱいなのに、ヘルパーさんが来られないとなると……いよいよ私たちも終わりですね
介護される母親と、介護する娘。絶望的な状況にいます。
[参考資料]