訪問介護事業者の倒産件数「過去最多」記録更新中
――いつまで経っても介護ヘルパーが来ません!
悲痛な声をあげる、斉藤陽子さん(仮名・48歳)。要介護3と認定された82歳の母と2人暮らし。母の年金は月12万円と、家計を支えるには少なく、陽子さんが介護に専念するわけにはいきません。介護サービスを利用しながら、仕事と介護を両立する日々を送っていましたが、その日、来るはずの介護ヘルパーがいつまで経っても訪れず、途方に暮れていたといいます。
ようやく事務所と連絡が取れ、予定したヘルパーが急病で来ることができず、人員のやりくりもできず……そんな緊急事態であることがわかりました。いつも来てくれるヘルパーは70代だといいます。高齢者が高齢者を介護している姿をみていて、いずれこんなトラブルが起きるような気はしていたとか。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、訪問介護員・ホームヘルパーの平均年齢は48.8歳、平均年収は390万円です。全産業の平均年齢43.9歳、平均年収506.9万円と比較しても、高齢化・低収入が問題であることは明らか。介護業界は人手不足が深刻とされる業界のひとつです。
また人手不足に加え、燃料・光熱費の高騰による運営コストの増加や、報酬改定に伴う訪問介護の報酬の引き下げは、訪問介護事業者を直撃。東京商工リサーチによると、2024年の訪問介護事業者の倒産件数は、10月時点で72件と、昨年の67件をすでに上回り、過去最多を記録しています。
特に小・中規模の訪問介護事業者は人手不足解消まで手が回らず、少ない人員でいかに効率的にサービスを提供するかに躍起になっているといいます。今後、斉藤さんのように「介護ヘルパーが来ません!」という事態は、ますます増えていく可能性が高いといえるでしょう。
また事業者のなかには、サービスを限定する動きも。そうなると、在宅介護を諦めざるを得ないケースも出てくるでしょう。
介護崩壊が迫っている――そんな危機的状況にあるのです。