働き方に対する考え方は、ひと昔前と大きく変わりました。転職や起業などにより理想を叶えようとする若者たちの一方で、異なる世代からは、理解しがたいものがあるようです。本記事では、Aさんの事例とともに生涯におけるジョブプランについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
なにも理解できません…年収850万円の51歳団塊ジュニア父、Z世代息子の就職祝いにブランド時計を贈り男泣き。一転、半年後「退職代行を使って辞めた」にフリーズ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

えっ、噓でしょ!? なんで会社辞めたの?

ある日、Aさんの妻はいつものように電車を乗り継いで息子のアパートに向かいました。合鍵を使って部屋に入ろうとすると中からチェーンがかかっており、息子が部屋にいることがわかりました。

 

中にいれてもらい、「Bちゃん、どうしたの? 風邪でもひいたの? 会社はどうしたの?」と聞くと、息子は「会社? 辞めたんだよ」とあっさり答えます。

 

これにAさんの妻は非常に驚き、理由を聞きましたが、ショックが大きすぎて息子の言い分が頭に入ってきません。Bさんは春に就職したばかりでまだ半年も経っていなかったのです。衝撃を受けた妻はとりあえず帰ってAさんに相談することにします。

 

息子の退職理由

仕事から帰宅後に息子が退職したことを聞いたAさんは言葉を失い、固まります。なんとか息子に電話をかけますが、でません。LINEで週末に戻ってきちんと説明するよう求めると1分も経たないうちに既読がつきます。息子からは悪びれた様子もなく「いいよ」の一言返信がきました。

 

「息子は会社をクビになったのか?」と一時は心配したAさんでしたが、帰宅した息子から自ら辞職したことを聞き、理由を問いただします。息子は「実際に仕事をしてみるとやりたい仕事じゃなかったんだ。なにがやりたいんだって言われてもまだはっきりしないんだけどね。でもいまの仕事を続けても自分は成長できないんじゃないか、と感じるんだよ。先輩なんかを見てるとわかるんだよ。それにお母さん、僕が朝苦手なの知ってるでしょ。満員電車も苦手だよ。家でできない業務内容でもないのに、ネットの時代にわざわざ出社なんておかしいでしょ。上司もうるさすぎるしさ。残業だってキツいから、余計朝起きれないんだよ」などと言います。

 

そんな理由が会社に通じたのか、と聞くと「退職代行サービスを使ったから簡単に辞められたよ」といいます。たしかにLINEでは、「仕事が大変だよ」「朝起きるのが辛いんだ」と言ってきたことはありますが、働く夫婦にとっては当たり前のことと感じて「頑張れよ」「夜更かししないでね」と返す程度でした。

 

高校時代からやっとの思いで大学に入り、就職でも苦労したAさんには息子の気持ちがわかりません。親子とも仲がよく、息子の気持ちはわかってきたつもりだったのにいまはまったくわからないのです。

 

これからどうするのか、アパートの家賃や生活費はどうするのか、と息子の考えを聞いてみました。Bさんは、「また仕事を探すよ。募集はいくらでもあるし。しばらくしたら会社を興すかもしれないけれどお父さんに迷惑はかけないから」と言います。