働き方に対する考え方は、ひと昔前と大きく変わりました。転職や起業などにより理想を叶えようとする若者たちの一方で、異なる世代からは、理解しがたいものがあるようです。本記事では、Aさんの事例とともに生涯におけるジョブプランについて、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
なにも理解できません…年収850万円の51歳団塊ジュニア父、Z世代息子の就職祝いにブランド時計を贈り男泣き。一転、半年後「退職代行を使って辞めた」にフリーズ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

売り手市場の時代と離職率

文部科学省と厚生労働省は、2024年春に卒業した大学生の4月1日時点の就職率が98.1%だったことを発表し、この数値は調査開始以来最高値となっています。その反面、離職率も高くなっています。厚生労働省の調査によると、2021年3月に大学を卒業した新卒就職者のうち、3年以内に離職した人は34.9%で、直近15年のなかでは最も高い数値となったため、ニュースでも報道されました。

 

しかし、30年以上の長いスパンで見ると特別に高い数値でもありません。それぞれの時代背景によって若者の離職理由は違うのでしょうが、人口減少による働き手不足が進む日本では若者の「売り手市場」は当面続くと思われます。
 

出所:厚生労働省 「学歴別就職後3年以内離職率の推移」より抜粋※
[図表]大学卒就職後3年以内離職率の推移 出所:厚生労働省 「学歴別就職後3年以内離職率の推移」より抜粋

 

■参考:過去30年間の主な出来事

平成7年 阪神大震災
平成9年 北海道拓殖銀行・山一証券が破綻
平成12年 ITバブル崩壊 千代田生命などが破綻
平成13年 アメリカ同時多発テロ
平成18年 「格差社会」が流行語に。
平成20年 リーマンショック、株価最安値
平成23年 東日本大震災
平成25年 「ブラック企業」が流行語に。
令和2年 新型コロナショック

父親の決断

息子の言い分をひととおり聞いたあと、Aさんは怒るでもなく諭すでもなく、ただ次のように語りました「お前が将来成功したとしても、お父さんたちは面倒を見てもらうつもりは一切ないからね。その代わりお父さんもお母さんもお前の面倒はもうみないよ」。

 

息子が帰ったあと、Aさんは妻に次のように言いつけます。

 

「もうBのアパートに行くんじゃない。俺の親父の世代なら『好きなようにやれ。失敗しても面倒みてやる』という人もいるんだろうが、俺たちの世代は親の面倒も満足にみられないし、社会人になった子どもの面倒までみられないんだよ。自分たちの生活で一杯一杯なんだ。お前だってわかるだろ。俺ももう疲れたよ。大学を卒業して『失われた30年』を生き残るためにずっと戦ってきたし、こんな人生はこれからもまだまだ続くんだ。

 

仕事なんて毎日辛いことだらけだよ。その辛さのなかから少しずつやりがいや喜びを見出していくものなのに。その前に辞めてしまうなんて。新入社員の初任給を上げるために、そのしわ寄せは俺たち既存社員にくるんだよ。そしてその新入社員はBみたいに簡単に辞めていくんだ。BにはBの言い分があるだろうが、もう話を聞いてやる余裕なんてないんだよ。俺も定年まで正社員で仕事が続けられるかどうかわからない。覚悟してくれ」

 

妻はあんなに仲のよかった家族がガラガラと音を立てて崩れていくのを感じ、声も出ませんでした。

 

〈参照〉

※厚生労働省 「学歴別就職後3年以内離職率の推移」

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001318986.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表