高齢者の生活のベースとなる公的年金。それは、家を手放し、老人ホームに入居するようになったも同じ。毎月費用はまずは年金がベースとなり、足りない分は貯金を取り崩す……これがベースになります。だからこそ「年金減額」は避けたいところ。そんなことが起これば、慣れ親しんだホームを追われることになります。
「月28万円」の老人ホームに入居する仲良し夫婦だったが…「年金月17万円」77歳夫急逝で76歳妻号泣。老人ホーム費用払えず強制退去となった「まさかの遺族年金額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

愛する人を失い、住まいも失い…「どう生きていけばいいのか」

最愛の人を亡くして意気消沈とする節子さん。さらなる悲劇がやってきます。老人ホーム費用です。現在の月額費用は夫婦で月28万円。ただ夫婦で一緒に入居することが条件なので、費用が払える/払えないに関わらず、この部屋は退去しなければなりません。

 

「いまの部屋のちょうど真下の1人部屋なら空いてますよ」とホームから話。慣れ親しんだホームなので、「ぜひっ」と二つ返事をした節子さん。問題の月額費用は20万円です。「博さんの遺族年金があるから大丈夫……」。これが節子さんの思惑。まずは年金事務所にもろもろ手続きに向かいます。しかし、そこで節子さんはまた号泣することになるのです。

 

――山本さまが受け取れる遺族厚生年金は月5,000円です

――えっ、たったそれだけ?

 

節子さんが受け取れるのは、遺族厚生年金。その受給額は、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の2分の1と自身の老齢厚生年金の2分の1の合算」を比較した際に多いほうとなります。

 

①は7.65万円、②は9.7万円となり、②が遺族厚生年金の額となります。次に考えたいのが、「自身の老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルール。節子さんの老齢厚生年金は月9.2万円。つまりこの額は受け取れず、残り5,000円が受け取れるということになります。

 

このルールを知らなかった節子さん、額面で月25万円強がもらえると思っていました。しかし実際は月16.5万円。10万円近くも低かったわけです。

 

遺族年金は非課税ではありますが、とても月20万円なんて払えっこない……節子さん、慣れ親しんだ老人ホームではあったものの、費用を払い続けることはできず「強制退去」が現実的に。

 

――夫を亡くしただけでなく、住まいまで追われて……もうどうしたらいいのか

 

実際の退去まで3ヵ月の猶予があります。その間に、新しい住まいを探さないといけません。

 

[参考資料]

厚生労働省資料『サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』