高齢者の住まいとして有力な選択肢である「老人ホーム」。ネックになるのは、その費用です。家賃の前払いとなる入居一時金に、毎月かかる月額費用。その費用はピンキリ。しっかりとしたシミュレーションのもと、身の丈に合ったホームへの入居がセオリーですが……。
頼む、金を貸してくれないか…「年金月24万円」見栄っ張りな元校長の84歳父が懇願。しぶしぶ応じる55歳長男も驚く「老人ホーム請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

値上げで「老人ホーム費用」の負担に限界…長男に泣きついたが

――正直、自分は高いと思いました

 

現在、入居している老人ホームに対して斉藤さん。「でもヘンなところには入ることはできない」といいます。へんなところとは……? そのあたりは、斉藤さんの長男・哲也さん(55歳・仮名)が教えてくれました。

 

――あの人は見栄っ張りなんですよ。元・校長とかいって、まわりの人の目も気になって、安いところには入居できないということなんでしょう

 

「はっきりいって、父とはずっと折り合いが悪い」と哲也さん。教員で、妙にプライドだけが高かった父を毛嫌いしてきたといいます。そのことを父・隆さんも知っているので、ずっと微妙な関係が続いてきたとか。隆さんが自宅を売り、老人ホームに入居するとした際も、「なぜ、そんな高級なところに入る必要があるのか?」と哲也さんが問うと、「別にお前に費用を出してもらうわけではないのだから、何かいわれる筋合いはない」と隆さん。いつでもふたりは平行線のままなのです。

 

しかし、隆さんが哲也さんに急接近する緊急事態が発生したといいます。

 

――すまん、少し金を貸してくれないか

 

元校長の父が、まさか頭を下げるなんて……。話を聞くと、昨今の物価高の影響で、老人ホームの管理費や食費、水道光熱費など、諸々値上げになったのだとか。そのことを考慮すると、大幅にマネープランが狂ってしまうといいます。

 

――それで、月額費用はいくらになったんですか?

 

そう尋ねると、目の前に出した、老人ホームからの請求書。それをみると、驚く金額が書かれていました。

 

――月35万円、たかっ!

 

食費が月2万円、水道光熱費が月1万円、管理費が……と積み重なっていき、7万円も値上げ。年間80万円超もアップとなると、計画が狂うのは当たり前です。

 

――そもそも、高すぎるんだよ、老人ホーム費用が

――仕方がないだろ。へんなところに入居するわけにはいかないのだから、立場的に

 

いつまでも「校長」の肩書に縛られ、ずいぶんと生きづらそうな……哲也さん、改めて父親とは仲良くできないと感じたといいます。

 

[参考資料]

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の費用や財産管理に関するアンケート調査』