遺す家族に負担をかけたくない。そんな思いから、相続対策の手段として真っ先に思い浮かぶのは生前贈与でしょう。しかしなかには、安易な生前贈与により、あとになって後悔する人もいるようで……。本記事では、Aさんの事例とともに相続税対策の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。
お義父さん、とても言いにくいのですが…逆さ仏で最愛の息子に先立たれた67歳・料亭花板の父、四十九日後に嫁から要求された〈4,500万円〉に絶句。「相続税対策がアダに」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

贈与の前にひと呼吸おいて…本当に生きているうちに渡して後悔しないか?

結果論にはなってしまうのですが、今回のケースは料亭の土地は普通に遺言書を書いてBさんに相続させることにしておくのが最もよかったケースでした。万が一Bさんが他界してしまっても、そのあとその土地をどうするかはAさんが改めて判断することができます。

 

もちろん結果論ですから、今回のような事態に備えて、買い取り資金の保険をかけておくなど一定の対策をうったうえで、生前贈与を実行するという手もあるといえばあります。しかし、新たなコストをかけたうえで相続税の節税を図るというのは良策とも思えません。

 

普通に相続して、普通に相続税を支払うというのが、全体を俯瞰したうえで最良の方法だった可能性が高いのです。生前贈与は相続税の節税のためには有効な方法の1つであることには間違いないのですが、すべての権利は受け取った側が有することになります。贈与する側の気持ちや意図はおよばないところに移ってしまうのです。

 

贈与自体は相続を円滑にするうえで有効な手段になりえるのですが、本当にその贈与が必要なものなのか、金銭的な損得だけを見た贈与でないかはじっくり検討する必要があるといえそうです。

 

 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役