なぜ高齢女性は「年金事務所」で大声で騒ぎ立てたのか?
社会問題と化しているカスハラ。加藤朋子さん(65歳・仮名)が目撃したのは、年金事務所。高齢女性が事務所スタッフに詰め寄っています。あまりの大声なので、女性のプライバシーが駄々漏れだったとか。
女性は67歳の専業主婦。先日、2つ年上の夫を亡くされたそうです。先に年金事務所に電話をして、「遺族年金はどれくらいもらえるものなのか」と問い合わせたそうです。そのときに聞いたことと実際が大きく乖離していたため、怒鳴り込んだということのようです。
――遺族年金は、死んだ夫の年金の、4分の3って言ったよね
――全然少ないじゃない! どういうことか、きちんと説明してよ
こんな情報まで駄々漏れ。その女性の亡くなった夫は、月20万円の年金をもらっていたとか。その女性の主張では、「4分の3だと聞いた。それであれば月15万円が振り込まれないとおかしい。でも実際に振り込まれたのは10万円もない」ということのようです。
遺族年金は、国民年金に由来する「遺族基礎年金」と、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」がありますが、基礎年金には子*の要件があるので、高齢者が遺族年金を語る場合、ほとんどが遺族厚生年金の話になるでしょう。
*18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方人
遺族厚生年金の年金額は死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。また遺族年金を受け取る人が老齢厚生年金を受け取る権利がある場合、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と、自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうが遺族厚生年金の額となります。
ここでよくある勘違いが「老齢基礎年金も含めた年金額の4分の3」というもの。あくまでも子の要件を満たさない高齢者が受け取れるのは、亡くなった人の「老齢厚生年金の4分の3」がベースとなります。
騒ぎ立てた高齢女性の場合、亡くなった夫が月20万円を受け取っていたのであれば、厚生年金部分は13.2万円ほど。その4分の3ですから、9.9万円となり、月10万円を下回ることになります。
――お客様、4分の3というのは……
親切に説明をする事務所のスタッフ。騒ぎ立てる高齢女性のトーンはみるみる低くなっていき、「えっ、そうなの?」「そんなの聞いてないわ」と繰り返します。どんなに騒ぎ立てようと、ルールはルール。勘違いだと認めて、引き下がるしかありません。その女性は恥ずかしそうにしながら、事務所をあとにしたといいます。
年金制度は複雑で、勘違いしていることもいろいろとあるでしょう。理解できないことはそのままにせず、年金事務所に聞いてみたり、検索して調べたりするなど、クリアにすることが重要です。
[参考資料]