死んだら海にまいてくれ…亡くなった父の真意
哲也さんとしては、早くお墓にいって、帰国したことを亡き父に伝えたい思いでいっぱいでした。そんな哲也さんに対して、姉・三鈴さんは
――お父さんなら、海にまいたわ
――えっ⁉
思いもしない言葉に、一瞬、姉が何のことをいっているかわからず、ギョッとしたという哲也さん。実は父親は生前、亡くなったら海に散骨してほしいと三鈴さんに伝えていたのだとか。その思いを組んで、三鈴さん、海洋散骨を選んだのだとか。
――それなら、俺の帰国を待ってくれたらよかったのに
――いつ、連絡がつくかわからないのに、そんなことできるわけないでしょ
さらに姉に怒られた哲也さん。なぜ父親は海洋散骨を希望したのか。それは、唯一、「哲也さんは海外に住んでいるらしい」という情報だけは父親の耳に入っていたのだとか。
――海に骨をまいたら、あんたに会えるんじゃないかと考えたんじゃないの。知らないけど
父親は晩年、体調を崩し、寝たきりになっていたといいますが、実家に戻り介護をしていたのが長女の三鈴さんでした。実家暮らしは2年にも及び、その間、つきっきりで父を介護してくれたといいます。それに対して弟は、父親と絶縁状態とはいえ、一切、連絡先を伝えずに海外へ……三鈴さんの怒りが収まらないのも無理はありません。
――まあ、お父さんを海にまいたからあんたも戻ってきたのかもしれないし。遺志が叶ってよかった、よかった
と三鈴さん。そんな事情を聞いた哲也さんは、父親の気持ちに触れ、ただただ涙が止まらず、子どものとき以来、声を出して泣くしかなかったといいます。
株式会社NEXERとイオンのお葬式が行った『終活の必要性に関するアンケート』によると、82.4%が「終活は必要」と回答。
・遺族に負担をかけないようにするため(60代・男性)
・高齢の母が亡くなって、遺品整理の難しさを感じた(70代・女性)
・お墓や相続も含めて遺族で自分の死後もめないように(70代・男性)
など、遺族の負担軽減の意図が強いようです。残される家族にしても、遺志をきちんと伝えてもらったほうが、心残りがなく、きちんとお別れをすることができます。哲也さんの父親も、しっかりと終活をしたから、絶縁状態の息子と再会を果たすことができたといえるかもしれません。
[参考資料]