夫婦の年金で「老後生活をプラニング」の落とし穴
――定年を迎え、仕事を辞めたら、元気なうちにそれまでできなかったことをいろいろとやろうな
多くの夫婦が、そんな会話をしているでしょうか。しかし田中さんの場合、そんな話をしていた1年後に、夫・正敏さんが急逝するという悲劇に見舞われます。
妻としては、最愛のパートナーが亡くなるという悲しみの一方で、今後の生活をリアルに考えなければなりません。老後の生活のベースとなっていた公的年金。夫が亡くなったことで、牧子さんが手にするのは、夫の遺族厚生年金と、自身の年金となります。
遺族厚生年金の年金額は、死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。正敏さんは月13.2万円の老齢厚生年金を手にしていたので、その4分の3である、9.9万円。さらに、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある牧子さんの場合、夫の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「①夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうの額が遺族厚生年金の額となります。
①は前出の通り9.9万円、②は6.85万円となり、牧子さんが受け取れる遺族厚生年金は①。自身の年金と合わせると16.9万円となります。さらに遺族年金は非課税となり、牧子さんが受け取る年金の手取り額は月16万円程度。やはり年金だけで暮らしていける金額といえそうです。
ただ夫婦合計の年金額で老後の生活設計をしていると厄介です。牧子さんの場合、夫婦で手取り23万円の年金がもらえる……これを基本とし、賃貸マンションで暮らしていました。それが月16万円と月7万円の減額。もし、持ち家で住宅ローンがないのであればよかったのですが、賃貸暮らしだと家賃負担が重くのしかかるケースが多いのではないでしょうか。
――そうですね、二人暮らしで家賃月10万円のマンションを借りていたので……引越しを考えないとダメですね
ポツリつぶやく牧子さん。今後のことを考えると、不安で仕方なく、正敏さんを亡くして以来、2度目の号泣となったといいます。