通常、年金受給が始まるのは「65歳」ですが、65歳より前に受給を開始できる「年金の繰上げ受給」をご存じでしょうか? 早くお金がもらえることから“一見お得”のこの制度ですが、「思わぬアクシデント」で後悔するケースもあると、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回は、年金の繰上げ受給の“盲点”について、62歳サラリーマンの事例をもとに解説します。
年金ってギャンブルだな…年金月12万円、“趣味に生きる”62歳サラリーマンが「年金の繰上げ受給」を選択して大後悔したワケ【CFPの助言】
「年金の繰上げ受給」を検討の際は、慎重に判断を
今回、雅史さんは繰上げ受給を選択したことで、大きく「2つ」のダメージがありました。
・高年齢雇用継続給付を受けた際の年金額調整
・障害年金の受給資格の消失
雅史さんは60歳以降も働いていることから3万円の高年齢雇用継続給付を受け取れますが、年金額に調整が入り、賃金の6%にあたる1万2,000円が年金から減額されます。
また、雅史さんは不慮の事故で骨折し、右人工股関節を装着することになりました。現在は車イス生活を余儀されており、障害等級2級または3級に該当する可能性があります。もし2級に該当した場合、本来であれば障害基礎年金として81万6,000円(2024年時点)を受給できていました。しかし、雅史さんは繰上げ受給をしているため、これを受け取ることができません。
つまり、雅史さんは高年齢雇用継続給付を受けた際の年金額調整によって毎月1万2,000円、障害年金の受給資格の消失により毎月約1万7,000円を失うことになりました。
今回のケースはあくまでも結果論であり、繰上げ受給がうまくいくケースももちろんあります。
しかし、雅史さんのように予期せぬ事態が発生した場合、繰上げ受給のデメリットが顕著に現れる可能性があります。そのため、繰上げ受給の選択を検討する際は、将来の健康状態や生活状況の変化に対するリスクも考慮に入れることが非常に重要です。
辻本 剛士
ファイナンシャルプランナー