通常、年金受給が始まるのは「65歳」ですが、65歳より前に受給を開始できる「年金の繰上げ受給」をご存じでしょうか? 早くお金がもらえることから“一見お得”のこの制度ですが、「思わぬアクシデント」で後悔するケースもあると、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回は、年金の繰上げ受給の“盲点”について、62歳サラリーマンの事例をもとに解説します。
年金ってギャンブルだな…年金月12万円、“趣味に生きる”62歳サラリーマンが「年金の繰上げ受給」を選択して大後悔したワケ【CFPの助言】
最大24%減額…「年金の繰上げ受給」の落とし穴
「年金の繰上げ受給」とは、年金支給が開始される65歳より早く年金の受け取りを開始することです。最短60歳から受給可能です。
早い段階から年金を受け取れるメリットがある一方で、注意しなければならないデメリットもいくつか存在します。主なデメリットは下記の3つです。
<年金の繰上げ受給のデメリット>
1.年金が最大24%減額する
2.「障害年金」を受給できない可能性がある
3.「高年齢雇用継続給付金」を受け取ると年金額が調整される
1.年金が最大24%減額する
65歳から年金を受け取るのと、繰上げ受給で早く年金を受け取るのでは、もらえる金額が異なります。繰上げ受給を選択すると、1ヵ月ごとに0.4%年金が減額され、仮に60歳から繰り上げ受給を開始した場合は0.4%×60ヵ月=24%減額されることになります。
2.「障害年金」を受給できない可能性がある
また、繰上げ受給を選択すると、「障害年金」が受給できなくなる可能性がある点も見落としがちです。障害年金の額が繰上げをした老齢年金の額より高いケースも多いため、万が一大きなケガや病気で身体に障害を負った場合に、もらえるはずだった金額よりも少ない金額しか受け取れないことになります。
3.「高年齢雇用継続給付金」を受け取ると年金額が調整される
さらに、「高年齢雇用継続給付金」についても注意が必要です。
「高年齢雇用継続給付」とは、60歳以降も働く方(60歳以上65歳未満の雇用保険加入者)のうち、賃金額が大きく減った方(60歳到達時の75%未満)を対象に、最高で賃金額の15%に相当する金額が支給されるというものです。
この制度の注意点は、給付を受けると、繰り上げた老齢厚生年金の一部が調整される点です。支給率に応じて年金停止率も変動し、最大で賃金(標準報酬月額)の6%が停止する仕組みとなっています。