通常、年金受給が始まるのは「65歳」ですが、65歳より前に受給を開始できる「年金の繰上げ受給」をご存じでしょうか? 早くお金がもらえることから“一見お得”のこの制度ですが、「思わぬアクシデント」で後悔するケースもあると、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回は、年金の繰上げ受給の“盲点”について、62歳サラリーマンの事例をもとに解説します。
年金ってギャンブルだな…年金月12万円、“趣味に生きる”62歳サラリーマンが「年金の繰上げ受給」を選択して大後悔したワケ【CFPの助言】
年金を早く受け取ったことで、生活が安定した雅史さん
その後、雅史さんは60歳になり、給与と高年齢雇用継続給付に加え、繰り上げた年金を受け取る生活がスタートしました。月額に直すと、給与は月20万円、繰上げ後の年金が約11万円、高年齢雇用継続給付は3万円で、合計34万円での生活です。
すでに住宅ローンは完済しており、夫婦2人だけの生活のため、34万円でも安心して暮らしていける金額です。
そのため、60歳以降も引き続き2人は趣味であるアウトドアやお菓子作りなどを楽しむことができます。雅史さんは、「やっぱり、繰上げ受給にしてよかった」と安堵しました。
しかし……。
キャンプに出かけた先で…雅史さんの身に降りかかった「悲劇」
ある日のこと。繰上げ受給を決断してから3年が経ち、62歳になった雅史さんは、変わらず友人とキャンプを楽しむ生活を送っていました。
その日選んだキャンプ場は、山を切り崩してつくられた渓流沿いの場所。眺めはとてもいいですが、足場が悪いのが難点です。友人と談笑しながら崖を下っていた雅史さんですが、ふとした拍子に足を踏み外し、崖から転落。すぐに病院に運ばれ、幸い命に別状はありませんでしたが、右大腿頚部を骨折し、右人工股関節を装着することになりました。
それから雅史さんは、車イス生活を余儀なくされ、日常生活に戻れるよう長いリハビリ生活が始まることに。急遽夫のリハビリをサポートすることになった妻の和代さんは、夫の状況から、「雅史さんは障害年金に該当するのでは」と思い、夫の回復を待って夫婦で年金事務所を訪ねることにしました。