通常、年金受給が始まるのは「65歳」ですが、65歳より前に受給を開始できる「年金の繰上げ受給」をご存じでしょうか? 早くお金がもらえることから“一見お得”のこの制度ですが、「思わぬアクシデント」で後悔するケースもあると、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏はいいます。今回は、年金の繰上げ受給の“盲点”について、62歳サラリーマンの事例をもとに解説します。
年金ってギャンブルだな…年金月12万円、“趣味に生きる”62歳サラリーマンが「年金の繰上げ受給」を選択して大後悔したワケ【CFPの助言】
“障害年金は受け取れませんよ”…担当者に告げられた「まさかのひと言」
近くの年金事務所に着くと、早速和代さんは担当者に現在の状況を説明しました。すると、年金事務所の担当者から思いがけないことを告げられます。
「雅史さんの場合ですと、初診日の前から『年金の繰上げ受給』を選択していますので、すでに年金を受給していることから、対象から外れてしまいます。そのため、障害年金は受け取れませんよ」。
えっ、どういうこと?……和代さんと雅史さんは、あまりの衝撃に言葉を失いました。
仮に雅史さんが障害年金2級に該当した場合、繰上げ受給を選択していなくても老齢基礎年金に相当する81万6,000円を受給できていました。これは、現在雅史さんが繰上げ受給によって受け取っている老齢基礎年金よりも多い金額です。
「繰上げ受給しなくてもこうやってケガをして障害年金を受け取れていたのなら、繰上げ受給をした意味がまったくないじゃないか! 高年齢雇用継続給付金で年金はカットになるし、こんなことなら65歳まで年金の受け取りを待っておけば……。俺は年金というギャンブルに負けたってことか……」雅史さんは後悔してもしきれません。