夫がいるから、妻がいるからと、パートナーの目を気にして自制することはあるでしょう。しかし、そのパートナーを失ったら……歯止めがきかなくなった先に、どんな未来が待っているでしょうか。
私には無理でした…年金18万円・昭和気質の夫、78歳で逝去。「生き直し宣言」の66歳妻、自由で気ままな老後が「わずか6ヵ月」で終焉を迎えたワケ

夫が亡くなりタガが外れた妻…半年で1,000万円の散財

まるで昭和にタイムスリップしたような、加藤さん夫婦。そんな暮らしは、豊さんが急性心筋梗塞で急逝したのを機にピリオドが打たれました。

 

遺族年金を合わせて年金は月15万円。現役時代にコツコツためた貯蓄は、節約、節約、節約の老後では1円も減らずに、3,000万円丸々残っています。

 

45年も連れ添った夫が亡くなり、深い悲しみの想いもあります。一方で、どこか解放感に似た感情も沸々とこみ上げてきます。

 

――私は自由なんだわ

――これから私、生き直すの

 

生まれて68年間、ずっと抑圧され続けてきたものから解放された知子さん。子どもたちにも「生き直し宣言」。死ぬまでにやりたいことをとことんやるといい、本当のセカンドステージが始まりました。

 

ただ知子さんの悠々自適な老後は、6ヵ月ほどでひとまず終焉を迎えます。

 

――散財する自分が、ふと、怖くなったんです。「私このままだと破産する」と

 

その原因は、いわゆる推し。実は知子さん、1年ほど前からひそかにはまっていたのが、世界をまたにかけて活躍するアイドルグループ。

 

――初めてテレビでみたとき、本当に心がトキめいて。でも夫に知られたら「年甲斐もなくみっともない」といわれるので、こっそり動画をみるくらいだったんですけど……

 

豊さんが亡くなったあと、推しサークルで知り合った同年代のファンと推し活の毎日。ライブやファンミーティングに参戦するために世界を巡り、都度、グッズを大量に購入。すべてを網羅しようとすると、お金はいくらあっても足りません。久々に貯金通帳をみたときに、血の気が引いたといいます。

 

――貯金通帳は3冊あって、1冊は夫が亡くなってからつくった通帳。これからの老後を楽しく生きるためのお金と決めて、1,000万円を入れておいたんです。

 

その通帳にあった1,000万円は、わずか半年で残高ゼロに。あまりの散財っぷりに、自分自身で驚いたといいます。この調子では、あと1年で貯金が尽きてしまう……老後破産、あまりに遠い世界の話かと思いましたが、すぐそこに迫ってきていたのです。

 

――お金を使うセンスがないんです。自由に気ままに生きるなんて、私には無理でした。

 

そういって、推し活から卒業。途端、やることがなくなった知子さん。再び、節約の毎日を送っているといいます。

 

[参考資料]

内閣府『令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究』