「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」報告書から読み解く、今後求められる「かかりつけ医」のあり方

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「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」報告書から読み解く、今後求められる「かかりつけ医」のあり方
(※写真はイメージです/PIXTA)

かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」が設置され、これまでの議論の内容が2024年7月に報告書として取りまとめられました。そこで、報告書に基づき、今後のかかりつけ医のあり方について考察します。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

かかりつけ医機能報告制度とは?

「かかりつけ医機能報告制度」とは、医療機関から都道府県知事に対し、地域住民を支えるために有しているかかりつけ医機能について、定期的に報告する制度です。

 

2025年4月から開始予定で、報告頻度は年1回、都道府県知事は報告内容をもとに医療機関からの報告内容をネット検索できるシステム(医療ナビィ)などで公表し、患者に適切な受診先の選択を促そうとする試みです。

制度整備の背景

2023年5月に「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。同法において医療法が改正され、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行い、2025年4月に施行することとされました。

 

このような制度が必要になった背景には、今後、複数の慢性疾患や医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者のさらなる増加、生産年齢人口の急減が見込まれるなか、地域によって大きく異なる人口構造の変化に対応して、「治す医療」から「治し、支える医療」を実現していくためには、これまでの地域医療構想や地域包括ケアの取り組みに加え、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進める必要があるとしています。

報告内容

都道府県知事に報告する内容は、1号機能と2号機能の2段階から構成されます。「1号機能」は、発生頻度が高い疾患に係る診療や日常的な診療を統合的かつ継続的に行うための機能についてで、特定機能病院・歯科医療機関を除く病院・診療所に報告が求められます。

 

報告項目は、「1次診療の対応可能な診療領域や疾患」「かかりつけ医機能に関する研修修了者・総合診療専門医の有無」などです。次に、1号機能があると確認できた医療機関には、2号機能の報告が求められます。具体的な報告内容は、時間外対応、入退院支援、在宅医療、介護連携などとなります。

1号機能

1号機能は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する機能」と定義されています。

 

報告内容は、

 

1. 「具体的な機能」(かかりつけ医機能)と「報告事項」について院内掲示により公表していること

2. かかりつけ医機能に関する研修修了者の有無、総合診療専門医の有無を報告すること

3. 17診療領域※1ごとの1次診療対応可能の有無を報告すること、1次診療の実施を行うこと、1次診療を行える疾患※2の報告を行うこと、医療に関する患者からの相談に応じられること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)

 

の、3つすべてを満たす場合に「1号機能を有する医療機関」として、2号機能の報告を行うことになります。

 

※1 17診療領域:皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系および外傷領域、小児領域

 

※2 1次診療を行える疾患の範囲例:高血圧、腰痛症、関節症(関節リウマチ、脱臼)、かぜ・感冒、皮膚の疾患、糖尿病、外傷、脂質異常症、下痢・胃腸炎、慢性腎臓病、がん、喘息・COPD、アレルギー性鼻炎、うつ(気分障害、躁うつ病)、骨折、結膜炎・角膜炎・涙腺炎、白内障、緑内障、骨粗しょう症、不安・ストレス(神経症)、認知症、脳梗塞、統合失調症、中耳炎・外耳炎、睡眠障害、不整脈、近視・遠視・老眼、前立腺肥大症、狭心症、正常妊娠・産じょくの管理、心不全、便秘、頭痛(片頭痛)、末梢神経障害、難聴、頚腕症候群、更年期障害、慢性肝炎(肝硬変、ウイルス性肝炎)、貧血、乳房の疾患

 

それ以外の報告内容としては、

 

1. 医師数、外来の看護師数、専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師数

2. かかりつけ医機能に関する研修の修了者数、総合診療専門医数

3. 全国医療情報プラットフォームに参加・活用する体制の有無

4. 全国医療情報プラットフォームの参加・活用状況、服薬の一元管理の実施状況

 

となっています。

2号機能

2号機能は、

 

1. 通常の診療時間外の診療

2. 入退院時の支援

3. 在宅医療の提供

4. 介護サービス等と連携した医療提供

 

などです。

 

1. 時間外対応

「通常の診療時間外の対応」については、①自院又は連携による通常の診療時間外の診療体制の確保状況(在宅当番医制・休日夜間急患センター等に参加、自院の連絡先を渡して随時対応、自院での一定の対応に加えて他医療機関と連携して随時対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称②自院における時間外対応加算1~4の届出状況、時間外加算、深夜加算、休日加算の算定状況、のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 

2. 入退院支援

「入退院時の支援」については、①自院又は連携による後方支援病床の確保状況、連携して確保する場合は連携医療機関の名称②自院における入院時の情報共有の診療報酬項目の算定状況③自院における地域の退院ルールや地域連携クリティカルパスへの参加状況④自院における退院時の情報共有・共同指導の診療報酬項目の算定状況⑤特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関から紹介状により紹介を受けた外来患者数、のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 

3. 在宅医療提供

「在宅医療の提供」については、

 

①自院又は連携による在宅医療を提供する体制の確保状況(自院で日中のみ、自院で24時間対応、自院での一定の対応に加えて連携して24時間対応等)、連携して確保する場合は連携医療機関の名称

②自院における訪問診療・往診・訪問看護の診療報酬項目の算定状況

③自院における訪問看護指示料の算定状況

④自院における在宅看取りの実施状況

 

のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

 

4. 介護連携

「介護サービス等と連携した医療提供」については、

 

①介護サービス等の事業者と連携して医療を提供する体制の確保状況(主治医意見書の作成、地域ケア会議・サービス担当者会議等への参加、介護支援専門員や相談支援専門員との相談機会設定等)

②介護支援専門員や相談支援専門員への情報共有・指導の診療報酬項目の算定状況

③介護保険施設等における医療の提供状況(協力医療機関となっている施設の名称)

④地域の医療介護情報共有システムの参加・活用状況

⑤ACPの実施状況

 

のいずれかがある場合は「当該機能有り」とする。

まとめ

超高齢社会、少子化、それに伴う働き手不足、地域によって大きく異なる人口構造など、我が国の社会保障制度を維持していくためには、これまでの枠組みを変化させる必要が出てきています。そのような状況を受けて、従来の地域医療構想や地域包括ケアの取り組みに加え、かかりつけ医機能が発揮できる体制整備が必要となっているのです。

 

これまで「かかりつけ医機能」については、診療報酬において「機能強化加算」や「地域包括診療料・地域包括診療加算」などで評価が行われてきました。これら点数の施設基準として要件化されてきた内容(時間外体制、入退院支援、在宅医療、介護連携など)が、報告書によると、かかりつけ医機能報告制度においても引き継がれているように感じます。

 

一方で、かかりつけ医機能の研修修了者の有無など、かかりつけ医機能を維持していくための医師に対する教育制度についても盛り込まれています。また、政府が進める医療DX施策である「全国医療情報プラットフォーム」への参加も求められています。

 

今後、国民、患者は都道府県が用意する検索プラットフォームにおいて、これらの情報をもとに、自分に合った医療機関(かかりつけ医)を選ぶシナリオを描いています。報告制度が機能したならば、患者の動向にも影響をもたらす内容であり、すべての医療機関は準備を始める必要があります。

 

 

大西 大輔
MICTコンサルティング株式会社 代表取締役

※本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。